「たまたま」ではなく正解を選べるようにする

そういったミスは、負けた側に目立つことが多いのですが、だからといって勝者側にミスがないということにはなりません。だからこそ、勝者にも棋譜の検証が必要になります。そこで振り返っておかないと自分のミスに気づかず、正しいと思い込んでしまうおそれがあるからです。正しいと思い込んで長期間続けたことを修正するのは簡単ではありません。

また、複雑な局面において、たまたま正解を選んだから勝ったものの、いくつかの選択肢に迷った場合などもあるでしょう。迷うということは、その局面を理解できていないということです。再び似た局面が現われた場合、理解できていなければまた迷い、そのときの気分や状況次第で、今度は正解を選べないかもしれません。

私は、勝った試合にも悪い勝ち方があって、負けた試合にもいい負け方があると思っています。負けた試合にもかかわらず内容がよかったといえるのは、最後までミスらしいミスもなく、最善を尽くして敗れるような場合です。もちろん、プロプレーヤーである以上、結果がすべてではあるのですが、存分に実力を発揮しても、対戦相手がさらにその上をいってしまったら、潔く白旗を掲げるしかありません。当然、悔しさは感じますが、そういう試合は負けても胸を張れるものです。

トレーニングは「長所を伸ばす」より「短所を補う」

いわゆるスパルタ式の教育が非難を浴びるようになってから、人材育成の主流は「短所を矯正する」ことから「長所を伸ばす」ことに変わってきました。権威や恐怖によって相手を従わせるのではなく、相手の長所を見出して褒める。そうすることで、相手の長所がさらに拡大して短所を覆い隠したり、長所の拡大に引っ張られたりするように短所も改善する、という考え方なのでしょう。

だからといって、直せる短所を放置したり必要な改善をしなくていいと考えたりするのは間違いです。

私の場合、バックギャモンはほぼ独学で身につけたため、コーチなどの指導を受けたことはありませんでした。したがって、自分の能力をどう伸ばすかも自己診断にもとづいて方針を立ててきたのですが、長所を伸ばすより、なるべく短所を補うような意識で研究を重ねてきました。