薬物乱用は、交通事故や傷害などの二次犯罪を誘発することがよくあります。悲惨な事件につながることも珍しくはありません。薬物が原因となる犯罪の加害者と被害者を生まない。そのためにも予防啓発と再乱用防止を強化することは絶対に必要です。

「あの芸能人が薬物で逮捕」と大騒ぎするマスコミ

——メディアが薬物問題に注目するのは、芸能人が逮捕された時くらいでしょうか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/KreangchaiRungfamai)

確かに著名人逮捕の時は、マスコミが大騒ぎして取材が連続します。中には、「関係する芸能人はいるのか?」「次は逮捕されるのは誰か?」などとかしつこく尋ねてくる記者もいます。

芸能人が逮捕されたというニュースで、多くの人が薬物問題を意識しますが、かといって現実には何も変わりません。

視聴者がワイドショーなどの情報に流され、クローズアップされた有名人個人や私生活に目が行くだけです。そうした番組の事情も理解できますが、ここでこそ薬物問題の本質を発信していただきたい。その良い機会だと思うのですが。

一例を挙げますが、麻薬取締法違反で逮捕された女優の沢尻エリカさんは、コカイン、大麻、合成麻薬MDMAやLSDを使ったと供述とされていますね。これは全部、危険性の高い薬物です。ここから、多剤化が進んでいることがうかがい知れます。多剤乱用の危険性、そして、簡単に薬物が手に入る現状があります。

こういった実態があるということを番組でも伝えてほしい。私から言わせてもらえば、芸能人は薬物を手に入れづらい。有名だから、生活環境も非常に窮屈で、どこに行っても目立ちますからね。それでも手に入るのです。つまり、それだけ薬物が入手しやすい環境が生まれていることになります。それを知ってもらいたい。

薬物問題はメディアの後押しが欠かせない

——これでは「終息」の道筋が見えてきません。

先ほど述べた「危険ドラッグ」販売店の壊滅には、メディアがわれわれを後押ししていました。

当時は、毎日、朝からずっとニュースでこの問題を取り上げていましたね。自動車の暴走など、事故の映像が繰り返し流されました。すると、国民の意識が変わってきまして、機運が高まったのです。結果として、これが全国に及んだ販売店の壊滅につながりました。

薬物問題というのは、皆さんが理解をしてくれたら少しずつ変わっていくのですね。ですから、多くのメディアに薬物問題を取り上げてほしい。深く掘り下げて、本質的な情報発信をしていただきたい。

マトリ』の本にたくさんの付箋を貼って、私に会いに来た若い記者もいました。「一生懸命勉強して特集記事を書くんだ」と言って、意気込んでいました。一時的ではなく継続して取り組んで、発信し続けてほしい。私が力になれることがあれば、応援したいと思いますね。