ビジネス化が進むと、本来の役割を果たせなくなる

もちろん、法律事務所が第三者委員会で稼ぐのはけしからん、などとは言わない。ただ、「事業」という切り口からそこにアプローチすると、次のような問題が生じることになるだろう。

八田進二『「第三者委員会」の欺瞞 報告書が示す不祥事の呆れた後始末』(中公新書ラクレ)

例えば、ここに、温かく迎え入れてくれて、抱えた問題は私たちがきれいさっぱり処理してあげましょう、というお寺と、まずあなた自身が心から反省しなさい、と性根を叩き直されるお寺があったとして、「法務部同士が連絡を取り合う」ユーザーは、どちらに駆け込むだろうか? 第三者委員会をビジネスと考えるのだったら、そのニーズに応えるサービスを提供するのが、「成功」の道だ。逆に言えば、「真因の追究」や「厳格な再発防止策の提起」は、ビジネスの拡大にとってマイナス要因になる危険性がある。その結果、当たり障りのない調査報告書が乱発されるという事態も、あり得ないことではない。

ここでも、第三者委員会を請け負う事務所が軒並みそれを単なるビジネスにしている、などとは言うまい。しかし、客観的には、不正の追及をかわして幕引きを図りたい依頼主と、そこでの仕事を拡大したい法律事務所があったら、その利害が見事に一致するのである。その構図を疑う、私のような人間もいる。

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