現金の割合を増やすべきか、減らすべきか

3月初旬以降、多くの投資家は株式などの金融資産を売却し、手元にキャッシュとして残す方向に動いた。いわゆるリスクオフだ。投資家のリスクオフの背景には、新型コロナウイルスの感染拡大により、世界経済の先行きが読めなくなったことがある。保有する金融資産のリスクを、可能な限り少なくすることを考えたのである。

日経平均株価の終値を示す電光ボード
写真=時事通信フォト
1ドル=102円台に上昇した円相場と2万円を下回った日経平均株価の終値を示す電光ボード=2020年3月9日、東京都港区の外為どっとコム

そうした不透明要因の中で、世界経済を支えてきた米国経済の景気後退リスクの高まりや、エネルギー資源需要の低下懸念を受けた原油価格の下落による影響は大きかった。現金への選好が高まり、世界全体で急速にリスクの削減が進行した。

3月下旬に差しかかり、それまでの株価の下落や米国の景気対策などを受け、一部の金融市場参加者の心理には落ち着きの兆しが見える。それが日米など世界的な株価の反発を支えた。ただ、いつ、どのように新型コロナウイルスの感染が収束するか、また、経済にどの程度の影響があるかは見通しづらい。同時に、欧米各国の感染状況を見ていると先行きは楽観できない。世界経済に関するリスク要因が増大傾向にあることは冷静に考えるべきだ。

投資に必勝の法はない。変化に対応しつつ資産を守るには、長期かつ大局的に経済の展開を考えつつ、タイミングと金額を分散して自己責任の範囲で資金を運用することが重要だ。この考えを徹底することによって、ポートフォリオ(種々の資産の組み合わせ)に占める現金の割合を増やすべきか、減らすべきか、各人なりの判断基準を持つことができるだろう。