不安定なマーケット環境を乗り切る対策
新型コロナウイルスは、世界経済に大打撃を与えています。なかでも、世界経済を牽引してきた印象が強い米国のダウ平均株価は、過去最大の下げ幅となる3000ドル近い暴落となるなど、足元のマーケット環境は間違いなく歴史的局面にあります。
これまでも、のちに○○ショックといわれる局面はいくつもありましたが、今回気にかけておきたいのが、ここ数年、上昇時も下落時も“過去最大”という言葉を耳にすることが多いこと。その背景には、自動売買などによる機械的な取引が広まっていることがあり、値動きの激しい展開が、短期間に起こりやすい傾向となっています。
各国政府や中央銀行があらゆる手段を講じるなか、新型コロナウイルス問題に、もともと割高水準にあった米国株の調整などが重なり、乱高下を繰り返しながら2番底を探るなど、当面、落ち着きのない不安定な展開が予想されます。
このような時に、私たちが資産を守るために何をすべきか、考えていきます。
1.まずは現金をきちんと確保
新型コロナウイルスの影響は、夏のボーナス半減あるいはカットなど個人の収入にも打撃を与える可能性が否定できません。観光業やイベント関連など影響を受けやすい業種を中心に金融資産のうち預金が生活費の半年から1年程度確保されているか、今の段階で把握しておくことが、この先ハラハラしないための大きな備えとなります。もし事態が長期化し混迷を深めたとしても現金はいちばん強い存在だからです。
投資は、今の生活基盤があってはじめてできるものです。積立て以外で保有する個別株や投資信託といった金融資産がある場合は総額にムリがないか預金比率とともに精査しましょう。
2.暴落時にやりたくなるけど、やってはいけないこと
とはいえ、人生には時間軸が異なる目的があります。積立てがそれです。数十年先を見据えると、今の踏ん張りが将来の生活に役立つ原資になるかもしれないのです。
相場が不安定なとき、最も陥りやすいのがパニックになって売ってしまう=損失を確定してしまう、狼狽売りです。日頃、“長期投資”と言い聞かせ、忙しさにかまけてほったらかしていたのに、急に怖くなって感情だけで売ってしまう。初心者にありがちな行動ですが、これを繰り返していては投資に対して損失だけを作るイメージとなってしまい投資の扉は永遠に開けません。
私は個人の場合、“長期投資とは、長期で投資と向き合うこと”と理解すると、心待ちがすっきりすると考えています。
長期を20年と想定し、投資をスタートしたのなら、その20年間に訪れる大きな局面に対し、“積立てる商品の魅力はブレていないか”そして“仕事や家計の変化という自分の事情”を重ね合わせ、住宅ローン支払いがきつい時は減額するなど、積立て額を見直してでも積立てが続けられる道を探すこと。それが個人にとっての長期投資だと思うのです。決してほったらかすことではありません。
3.確定拠出年金はどう考えるべきか
確定拠出年金は、働き方によって企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金(iDeCo)あるいはその併用とさまざまです。
まず掛金について個人型確定拠出年金(iDeCo)を例にみていきましょう。今は拠出方法を工夫することもできますが、多くの方は毎月同じ額を拠出する“毎月定額拠出”を利用しているかと思います。この場合、買い付けに行くのは1カ月に1度のみです。今回の暴落局面は展開が非常に早い印象がありますが、次回買付けにいくときはのちの上昇を期待するなら安く買える場面かもしれません。総額からみても、運用期間が長く拠出額が大きいほど回復までの道のりはあるにしても、暴落時の拠出が総額に占める割合は限定的でしょう。基本、掛金を変更する必要はないと考えます。
考えるべきは、個々のアセットクラス、運用中の資産の状況でしょう。
最初に知っておきたいのが確定拠出年金は、通常の投資と比べると下げ相場に個別の対応がしにくいこと。
個人型確定拠出年金(iDeCo)は金融機関ごと、企業型確定拠出年金は、各企業が加入する商品提供会社が定める運用商品ラインアップの一覧から商品選択を行うため、個人が証券会社や銀行などで、株式や投資信託、ETFなどから自由に商品を選んで行う通常の投資と比べると、格段に選択肢が限られています。
暴落局面という一点をみると、まるで何を選んでも下がると思ってしまうほど、下落局面にすぐさま異なる値動きが期待できるアセットクラスを探すことが通常の投資に比べて難しいのです。そのため、大きなダメージを追うほど、短期的に挽回することは難しくなる可能性が高まります。
とはいえ、確定拠出年金はなんといっても長期で考えるものであり、ウーマン読者の方はまだまだ運用期間が十分確保できる方が多いでしょうから、これまで積立ててきた商品をベースに自分の見通しに合った戦略を守ることが大切です。収益機会が減る可能性よりも損失を避けたいなら評価損益がプラスのものを一定期間「元本確保型」へ回避させる策もありますが、下落局面の近辺で戻す勇気が持てないと、運用効果を減速させる要因となってしまいます。確定拠出年金の個々のアセットクラスにおいても、基本は継続することです。
さらに今回の歴史的局面を長期ではパフォーマンスを上げる好機と捉えるポイントとして、投資経験の差があると思います。ひとつの目安となるのは、“リーマンショックを投資家として経験したかどうか”です。リーマンショック前から資産運用をしていて、あの暴落を経験しながら現在に至るまで投資と向き合い続けている投資家のマインドなら、数年先を見越して、底入れが確認できた後、外国株式型や米国株式型の比率を高める積極的なスタンスで、米国の現職大統領が再選を目指す年の暴落からの道のりを一定のチャンスと捉える道もあるでしょう。
企業型確定拠出年金は思わぬ損失を招くケースも
ただ、企業型確定拠出年金では思わぬ損失を招くケースがあります。それが転職や退職で、もし業績次第で希望退職が実施された場合、好条件なら検討したいと密かに考えるなら対処が必要です。というのも確定拠出年金を移管する際には、すべて売却(一旦、現金化)する必要があるのでさらに下落する可能性を警戒するなら「元本確保型」へ回避させるなど早めの対処が必要です。