不祥事を起こした企業の株主が「二重のダメージ」を受ける

ところで、第三者委員会は、“手弁当”で仕事をするわけではない。公的機関として、公から報酬が支払われるのでもない。それを負担するのは、依頼した企業、団体である。では、いったいいくらのコストをかけて調査を行ったのだろうか? 依頼した企業などがそれを明らかにしたことも、報告書にその金額が明示されたことも、私の知る限りこれまではない。

これは、実は重大な問題で、不祥事を起こした企業の株主は、その発覚による株価下落で損害を受けたうえに、第三者委員会への支出による会社の損失=企業価値の棄損という形で、二重のダメージを受けていることになるのだ。そんな支出など大したことはないのだろう、と言うなかれ。ある重大事案で設立された第三者委員会に対して、数十億円の対価が支払われたという話を、耳にしたことがある。

「日弁連ガイドライン」にあるように、弁護士報酬は「時間制」でカウントされるのが普通だ。その報酬は、例えば同じ「士業」の公認会計士や税理士よりも、割高な水準にある。加えて、仕事をするのは、通常、報告書に名前の出ている人たちだけではない。資料の読み込みや分析、さらには関係者へのヒアリングといった実務に、所属する法律事務所の弁護士やスタッフが多数関わる。その体制で3カ月、4カ月と任務を遂行するのだから、人件費だけで金額が相当嵩むのは、想像に難くない。

そうしたコストをかけて、当該企業が再生を果たすことのできる中身のある報告書が出るのなら、まだいい。そうでなければ、単なる無駄遣いだ。その意味でも、第三者委員会の報告書の作成・公表に関する一連のコストに無関心でいるわけにはいかないのである。

「過払い金請求」と並ぶビッグビジネス

このコストに関しては、別の視点からも重要な問題を指摘しておかなくてはならない。誤解を恐れずに言えば、第三者委員会の委員を引き受けることが、「弁護士業界」にとって格好のビジネスになっている、という現実があるのだ。

税理士法人ファーサイトが運営する「第三者委員会ドットコム」という情報サイトによれば、19年度に設置された上場企業の第三者委員会(内部調査委員会なども含む)は、73件に上る。ちょうど5日に1件のペースでつくられている計算で、請け負う側にとっては、十分魅力ある市場だと言えるだろう。事実、第三者委員会専門の事務所も生まれている。

第三者委員会が揺籃期から成長期に入った2000年代初めは、奇しくもわが国で司法制度改革が推進された時期と合致する。04年には法科大学院ができ、司法試験合格者が大幅に増加した。ところが、改革の意図に反して、それにより生じたのは、「弁護士余り」の現実だった。まったくの偶然ながら、そんな業界にとって、第三者委員会ビジネスは、「過払い金請求」と並ぶビッグビジネス・チャンスをもたらす救世主ともなったのである。