延期が決まった東京五輪には「金で買った」という疑惑がある。会計学者の八田進二氏は「東京五輪の贈賄疑惑は第三者委員会によって“シロ”と結論付けられている。だが実際は、調査によって疑惑は深まっていた」と指摘する——。

※本稿は、八田進二『「第三者委員会」の欺瞞 報告書が示す不祥事の呆れた後始末』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

東京五輪招致贈賄疑惑問題/記者会見に臨む竹田JOC会長=2019年1月15日
写真=AFP/時事通信フォト
東京五輪招致贈賄疑惑問題/記者会見に臨む竹田JOC会長=2019年1月15日

「東京五輪は金で買った」疑惑は今も晴れていない

不祥事を起こした企業や行政組織が、外部の専門家に委嘱して設置し、問題の全容解明、責任の所在の明確化を図るはずの「第三者委員会」。だが、真相究明どころか、実際は関係者が身の潔白を「証明」する”みそぎのツール”になっていることも少なくない。調査中は世間の追及から逃れる”隠れみの”になり、ほとぼりも冷めかけた頃に、たいして問題はなかった——と太鼓判を押すような報告書もあるのだ。

たとえば、2021年夏の開催が決まった東京オリンピック・パラリンピック。コロナ騒動で延期になったにもかかわらず、盛り上げようと奮闘する関係者には大変に申し訳ないのだが、どうやら我々は「東京五輪は金で買った」という疑惑が払拭されないまま、本番を迎えなくてはならない。

東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が、元国際陸上競技連盟会長の子息が関係するシンガポールのコンサルタント会社に約2億2000万円を支払った、とフランスの検察当局が公表したのは、東京開催が決まってからおよそ3年後の16年5月のことである。当時、招致委の理事長を務めていたのが、竹田恆和日本オリンピック委員会(JOC)会長だ。

例によってJOCは、その月のうちに、独立性を有するとされる弁護士2名と公認会計士1名などから構成された「調査チーム」を立ち上げる。調査の主眼は、このコンサルタント契約における契約金額、成果、締結過程の適切性を検証することにあった。具体的には、疑惑のベールに包まれたコンサル会社や、その代表者の真の姿を明らかにするのが、その使命だった。