心の内を読んで、リスト化するのが一番重要
もちろん、相手は簡単に心の内は明かさない。本当は譲歩できるものなのに「それは絶対に譲れない」という姿勢を示すことで、こちら側の譲歩を引き出そうとしているかもしれない。
もし相手が絶対に譲れないと思っているラインを見極めることができず、そのラインを踏み越えてしまうと、交渉は決裂して、自分の要望は何一つかなわなくなる。逆に、相手が譲ってもいいと考えているものを見極めることができたなら、こちら側は、相手の譲歩可能なものをしっかりと要望すればいい。
このように、交渉においては、相手にとって『絶対に譲歩できないものは何か』『譲歩可能なものは何か』という相手の心の内を読んで、それをリスト化することが一番重要になる。
では、どうやって相手の心の内を読んで、相手の要望を探り、それに優先順位を付けていくのか。こればかりは経験を積んで学んでいくしかないところでもあるが、僕が経験上得たポイントを述べよう。
業界ごとに独特の価値観が根付いている
相手の心の内の要望を探り、それらの優先順位を把握しようと思えば、相手の価値観を理解することが有効である。価値観がわかれば、何を重視し、何にあまりこだわりがないのかがわかるからだ。
僕が政治家になる前の弁護士時代に様々な職種の人と交渉をして感じたのは、それぞれの業界・組織には、業界・組織特有の価値観のようなものが根付いているということだ。できれば、普段からいろいろな人と話をして、それぞれの業界や組織の価値観がどういうものかを少しずつ体感していくといい。教科書的なものはないから、自分で経験して得ていくしかない。
お金にこだわる価値観もあれば、メンツにこだわる価値観もある。納期重視なのか、クオリティ重視なのか。業界や組織によって違いがある。
例えば納期重視の人が相手なら、相手は納期については絶対に譲らないと推測できる。その場合、納期で交渉しても譲歩を引き出せる余地は少ないので、それ以外のところで、例えば報酬・代金額を上げてもらうことをこちらの優先順位の高い要望としたほうがいい。逆に、こちらが「特別に納期を早める」という譲歩のカードを切れば、他の部分で相手から大きな譲歩を引き出せるかもしれない。