新しいことを生み出す人が持つ「余白」
遊びが必要なのは、スポーツだけではない。ビジネスにおいても、遊びを採り入れたほうが、時代の変化にうまく対応できるのではないだろうか。
仕事で経営者と会う機会が多いが、新しいことを生みだす人は、「余白」を持っているような気がする。余白とは何かと言えば、「遊び」である。
ビジネスだから効率を求められる部分は当然ある。そこは徹底するのだが、効率一辺倒ではないのだ。イメージとしては2割ぐらいは、“面白そう”とか“これがあったら楽しそうだな”と思ったことに着目してサーチしたり、体験したりしている。それが将来的に仕事になるかどうかはあまり重視しない。楽しそうだからやるという、本能的な動機だ。たとえて言えば、子どもが積み木をしていて、この上にもう一つ積み木を載せたら、どんな形になるだろうとワクワクしながら遊んでいる。そんな感覚に似ているだろうか。
「夢中」になるとブレイクスルーが起きる
不確実性の面白さ。失敗したっていい。試行錯誤すること自体が楽しい。
遊びは、日常の仕事に追われて、固まりそうになっている発想を柔らかくして、新しいものが生まれる環境をつくってくれる。遊ぶことが、人の可能性を広げてくれるのである。遊びの何がすごいかと言えば、人を夢中にしてくれたり、我を忘れて没頭させてくれるからである。
陸上選手の頃を振り返っても、夢中で競技に取り組めているときに、それまでいくら努力してもできなかったことが、できてしまった経験がある。夢中というのは、立ちはだかっていた壁を一瞬にして突破できる力を与えてくれるのだ。しかも、そのとき競技の本質、深い部分に触れることができる。アスリートとして一つ上のステージに行けるのである。
「努力」よりも、「夢中」が勝るのだ。
仕事の世界でも同じではないか。遊びで夢中になることに身を置く中で、ずっと解決できなかった問題をブレイクスルーできるかもしれない。遊びを採り入れることは、じつに賢明な生き方であるということが、この本『新装版 「遊ぶ」が勝ち』を通して伝わるとしたら本望だ。