石炭火力は低コスト

(理由2)日本の石炭火力は安い

政府の調査会の2015年の報告では、もっともコストの安い発電方法は原子力発電で1kWhあたり10.1円からとなっている。次いで、一般水力11.0円、石炭火力12.3円、バイオマス(混焼)12.6円、LNG火力13.7円となっている。このほか、石油火力は30.6~43.4円、太陽光(メガ)24.3円、太陽光(住宅)29.4円、風力(陸上)21.9円である。

原子力や水力はコストが安いとはいっても、今以上に供給能力を増やすのは現実的ではない。拡張可能な電源のうち、もっとも安いのは石炭火力で、次いでLNG火力である。

高効率の「コンバインドサイクル発電」

(理由3)日本の石炭火力は効率がよいので国際展開すれば温暖化対策になる

日本の火力発電の効率は上がっている。「コンバインドサイクル発電」という効率のよい発電方法が使われているからである。

コンバインドサイクル発電では、まず燃料をガス化して燃やし、ガスタービンを回して発電する。このガスタービンを回したあとの余熱を利用して蒸気タービンを回してもう1度発電する。余熱を捨てないで電気として回収するということである。

現在のコンバインドサイクル発電では、約50%の熱効率が達成されている。これは1950年代の火力発電の2倍から3倍の効率である。効率が高くなれば、当然にCO2の排出はその分少なくて済む。

世界トップクラス、日本の「石炭ガス化複合発電」

(理由4)日本の石炭火力はクリーンである

コンバインドサイクル発電は石炭火力に使うこともできる。そのためには石炭をガス化しなければならない。これが石炭ガス化複合発電(IGCC)である。

燃料をガス化したときに、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、煤塵ばいじんなどを取り除くことができるので、大気汚染物質の少ないクリーンな発電方法となる。この点は、国際比較すれば一目瞭然である。電力量当たりのSOxとNOxの量は、次のグラフの通りである。

出典:J-POWER(磯子のみ2015年、ほかは2014年)

火力発電の電力量あたりのSOxとNOxの量は、イタリアと日本が明らかに少ない。さらに、最新鋭の磯子火力発電所は石炭火力でありながら、さらに1桁少ない。

CO2排出量の多い中国、アメリカ、インド、ロシアなどの石炭火力の多くは効率が悪く大気汚染物質の排出も多い。ここに日本の石炭火力発電技術を導入すれば、大気汚染も少なくなり、かなりのCO2削減につながるはずである。

CO2排出量は「テクノロジーで解決できる」

(理由5)CO2を分離して、地中や海底に貯蔵する技術が実用化間近

日本の石炭火力技術がいかに素晴らしく効率的でクリーンで安価であったとしても、「脱石炭」の動きが出てくるのは、石炭火力はCO2排出量が多いからである。燃やして同じ熱量を得るために排出されるCO2の比は、石炭:原油:LNGで、10:7.5:5.5とされている。石炭はLNGの倍近くCO2を出してしまう。

しかし、この点はテクノロジーで解決できる見込みである。化石燃料を燃やすときに出るCO2を捕まえて地中や海中に埋めてしまえばよい。この二酸化炭素分離・貯留技術のことをCCSという。