一度ボーナス支給を始めたら、やめられない
「同一労働同一賃金」の旗を振る政府としては、この非正規公務員問題を放置できなくなっている。2020年度から、非正規公務員の待遇改善に向けて、ボーナスを支給できるように新制度を設けた。総務省の試算ではこれに伴う人件費の増加分は1700億円に達するとしており、この分は地方交付税交付金として自治体に配分するとしている。これに伴ってすべての自治体が非正規職員にもボーナスを支給する見通しだという。
待遇改善をして、その分は国が面倒をみるというのだから、自治体は喜んでいるかと思いきや、どうもそうではない。
理由はこうだ。国から地方に交付される地方交付税の総額自体は2010年をピークに2018年まで7年連続で減り続けてきた。2019年は8年ぶりに1620億円の増加となったが、国の財政は厳しく、再び減らされることになりかねない。そうした中で、非正規職員のボーナス相当分として交付税を増やしても、その他のところで交付額を削られる可能性もある。しかも、いったんボーナス支給を始めたら、止めることはできないから、長期にわたって人件費が増える。しかも時給が上がっていけばボーナスも増えていく。それを国が面倒みてくれるはずはない、というわけだ。
臨時職員を雇用することで人件費を圧縮
実は、非正規公務員が増えてきたのには理由がある。地方自治体の財政が厳しさを増す中で、自治体職員の数を大幅に減らしてきたのだ。地方自治体の統合を推し進めた、いわゆる「平成の大合併」以降、退職した職員の不補充などで正規職員を抑え、人件費を圧縮する一方、臨時職員などを雇用することで仕事を回してきたのである。非正規公務員は2006年から2016年度の10年間で40%も増えたというから、ざっと20万人の非正規が生まれたことになる。
地方公務員の人件費総額は1999年には27兆475億円に達していたが、2000年度決算で戦後初めて減少、それ以来、団塊の世代の退職で退職金がかさんだ2007年度を除いて2013年度まで減り続けた。2013年度は22兆1779億円だった。
地方の正規職員の給与は、国家公務員の給与に準じて引き上げられる慣行になっている。政府は人事院勧告に従って2014年度から6年連続して国家公務員の給与を引き上げており、地方自治体にもこの方針に従うよう通達を出している。ちなみに、総務省が自治体に出す給与を巡る通達は微に入り細を穿っており、国家公務員以上の待遇向上をしないことや、財政悪化を理由にした賃金カットなどを行うことを事実上禁止している。