コンセプト転換はマルキューから持ち掛けられた

「なんか、すごく変わりましたね」

SHIBUYA109店の様子。黒を基調としたアイテムを多くそろえていた過去と比べ、現在はパステルカラーを取り入れ、アイテムのバリエーションも増やしている(提供=ジャパンイマジネーション)

SHIBUYA109店に同行した、担当の女性編集者(1991年生まれ)は開口一番、こう話した。

福岡県生まれの当人にとって、「セシルは高校時代のカリスマブランド」。当時は「天神コア店」(福岡市中央区)に通ったそうで、マルキューに来たのは大学時代以来だという。

驚くのも無理はない。品ぞろえは、かつての黒×白ではなく、パステルカラーの服も増え、チェック柄もある。雑貨類も充実した。イヤリングなどファッション小物だけでなく、防犯ブザーもあった。大音量だった音楽も控えめで「昔より静か……」と編集者はつぶやく。

視察したのは平日の午前中。店内を回るうちに女性客が増えた。20歳前後が多いようだ。

「新コンセプトとして『今の私にちょうどいい』を掲げました。顧客層は18歳から23歳の等身大の女性で、販売資料のペルソナ(顧客像)も横浜市や川崎市の公立高校生に設定。品ぞろえはワンピースを36%(従来は30%)、雑貨も20%(同14%)に高めています」

CECIL McBEE営業部次長の手塚邦洋氏(撮影=プレジデントオンライン編集部)

CECIL McBEE営業部次長の手塚邦洋氏(営業統括リーダー兼商品統括リーダー)はこう話し、今回の舞台裏を明かす。以前はSHIBUYA109店のチーフやパルコ池袋店店長も務めた。

手塚氏によると、コンセプトを変えるきっかけとなったのは、SHIBUYA109が40年の節目に大幅リニューアルしたことだったという。

同館は地下2階にフードエリアを新設。若い女性から熱烈な支持を得ている韓国グループ・BTS(防弾少年団)のポップアップストアを29日まで開催している。長年盟友関係にあった同館からリブランディングを持ち掛けられ、検討を進めた。

「かつてはカリスマ店員に憧れて、上から下までセシルでそろえ『私を見てほしい』というお客さまも目立ちました。でもSNS時代の現在は『自分の存在を多くの人に共感してほしい』という意識。お客さまが楽しめる売り場にしようと、このように変えたのです」

「モテ服」路線を掲げたが迷走気味に…

実は、セシルは2年前の2017年にもブランドコンセプトを変えた。当時は「モテ服ナンバーワン」を掲げ、ブランドのキーカラーをブラックとホワイトからホワイトとピンクに変身。乃木坂46の白石麻衣さんを起用して、「トレンドを反映した大人のモテ服」で訴求した。

だが後述するが、もともとセシルがブレークしたのは1990年代後半。セクシーな肌見せスタイルが「ガングロギャル」にも支持された。当時より露出が控えめになったとはいえ、ギャルイメージのセシルが「大人かわいい」を掲げたため、イメージとのギャップが埋まらなかった。セシルファンから見れば「どこに行っちゃうの」感があったのだろう。