「航空業のマネジメントはボトムアップが合っている」

11月から全社員が小さなリーフレットのクレドを携帯しているが、同僚の評価はまちまちだ。自分たちの議論がこのような形に集約したことを「いいね!」と喜ぶ声も、「なんだかよくわからないな」と冷めた声もある。

「自分たちがクレドの意義を伝える役割を果たしていかないと」

5人は、クレドの策定に関わった責任をクレドの定着に向けて果たしていくつもりだという。すっきりとした表情にはクレドの策定プロセスで得た発見や理解への自信が見えた。

そんな彼らの様子に、市江氏がインタビューで強調した次の言葉が思い出された。

「航空業のマネジメントはトップダウンではなくボトムアップが合っています。安全運航のためには上からの指示に従うのではなく、自分で考えて行動する自立性が最も重要です。今回の選択や手法に批判があることは承知しています。しかし広告もクレドも万人の評価が得られることはありません。今回いちばん大事だったのは、社員が自分たちで自分たちの会社のことを決めたということなんです」

撮影=プレジデントオンライン編集部
スカイマークの市江正彦社長

茨城空港や神戸空港に「空の旅」という選択肢を増やした

再上場は目前となった。

スカイマークが第3極としてさらに力をつければ、私たちの移動手段の選択肢は確実に広がる。すでに成果は目に見える形で現れている。例えば茨城空港や神戸空港のように大手2社が力を入れていない地域に、「空の旅」という選択肢を増やしたのはスカイマークの成果である。そうした動きを広げるうえで、社員の自立性は重要なエンジンとなる。

一方、市江氏は同社の株主である日本政策投資銀行出身で、会長の佐山展生氏は筆頭株主インテグラルの代表取締役社長である。二人とも上場後にスカイマークが自立すればいずれかのタイミングで経営から離れていくだろう。

そのとき自立型集団であるためには、外部のプロ経営者に頼むのではなく、スカイマーク生え抜きの社長が登場したほうがいい。ボトムアップ型の意思決定は、そのためのトレーニングだったともいえそうだ。

できあがった広告は地味だった。しかしそれを絞り出していくプロセスは、少なくとも社員のマインドセットを変えたようだ。今回のポスターを見た目だけで判断しないほうがよさそうだ。

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