「世界中を見わたしてもここでしかできない」

コンビニにしても、ゴールデン街の事例にしても、表面的に見たら「ユニークな体験だね」で終わってしまうかもしれません。しかし、その富裕層の頭の中を読み解くと「世界中見わたしても、ここでしかできない(可能性が高い)」というロジックがあります。

コンビニは世界中どこにでもありますが、「先進的な商品開発をしていて、商品競争が非常に激しい日本のコンビニで、最もおいしい料理を食べる体験」は、日本でしかできません。

また世界中どこにでもネオン街はありますが、ゴールデン街のような入り組んだ構造のBARとその雰囲気は非常にユニークネスであり、「ここでしかできない」体験として認知されているのです。

自分の人生を豊かにしたい世界の富裕層

ボストンコンサルティンググループが2017年に発表した調査レポートによると、世界のラグジュアリー消費額は2023年までに154兆円まで成長します。そのうちモノ消費市場が49兆円、コト消費市場が105兆円となり、圧倒的にモノからコトへのシフトチェンジが表面化していきます。その予兆に気づいたのは私が大学卒業後、シンガポールに留学(2009~2011年)していた頃のことです。

私はシンガポール国立大学に通いながら、現地のプライベートバンクでインターンをしていました。そのとき、日本ツアーに行きたいというシンガポールの富裕層とお話しする機会がありました。当時、注目が集まっていたのが冬のレジャーです。私が「ニセコのスキー、網走の流氷クルーズ」などを提案すると、口々にこう言いました。

「日本に行ってみたいのだけど、もっとユニークなプランはないの?」

この言葉の意味することは、単純に高級なホテルに泊まりたい、ぜいたくをしたいということではなく、「高いお金を払ってでもいいから、ユニークな経験がしてみたい」ということです。さらに富裕層の海外旅行はどのようなものなのか聞くと、次のようなものだと教えてくれました。

●サンセットが有名なバリ島、モルディブなどのエリアで無人島を貸し切る。海岸にテーブルを用意し、シェフを連れてきたら、その最高のサンセットを見ながらフルコースを楽しむ。
●スイスなどの雪山の中腹にヘリコプターで行く。着陸すると雪の中にその土地で取れたアイスワインが仕込まれている。参加者全員で1本飲んで、ホテルへ戻る。

なぜ彼らはそこまでユニークな経験に興味があるのか。当時のお客さまはこう言っていました。

「Because investing in experience is the only thing that will prove that your life is rich in the future.(経験への投資が、将来、自分の人生が豊かだったと証明する唯一の財産になるからだ。)」