「東アジア・ドミノ」の牌が倒された

【佐藤】前著の『米中衝突』で、手嶋さんと朝鮮半島を取り巻く情勢が激変している様子を詳しく読み解きました。ドナルド・トランプというこれまで政治に無縁だった大統領が誕生し、大胆な米朝接近を演出し、これが日韓関係にも乱気流を巻き起こしたことが大きな背景になっていると思います。

【手嶋】日韓の未曽有の対立と予想外の米朝の接近。この二つのファクターがない混ぜとなって、朝鮮半島情勢が新たな相貌を見せ始めているのですね。日本ではあまり語られてこなかった視点ですね。

【佐藤】トランプといえども、現職のアメリカ大統領ですから、同盟国である日本と韓国の関係悪化など望むはずはありません。彼は自身の信念に従って、自分なら米朝の扉をこじ開けることができると、目の前のボタンを押したのだと思います。ところが、実はそれは“東アジア・ドミノ”の牌だった。その牌は次々に倒れていき、まさしく連鎖の果てに、トランプ自身も想定しなかった国際政局の変動を呼び起こしてしまったのです。

考えてみれば、トランプという大統領は就任以来、中東をはじめ、様々な地域でこうしたドミノ倒しをやっています。大統領選の再選を間近に控えていることもあって、これからも以前にも増して大胆な行動に打って出る可能性があります。

国際政局の「地雷原」になっている

【手嶋】まさしく、トランプ・ドミノに心せよ、ですね。やっていることの是非、人物の好き嫌いは別にして、トランプという政治家が、国際政局に新たな地殻変動を引き起こす地雷原になっている、これは紛れもない事実です。裏を返せば、いま国際社会で起きている様々な危機は、トランプという政治指導者がどのように関わっているのかをみれば、より精緻に理解することができると思います。

【佐藤】そう、すべての道は、ローマにではなく、トランプに通ず、なのです。(笑)

【手嶋】我々の前浜で起きている日韓の対立も、トランプ・ファクターなしには、正確に読み解くことはできないと思います。