サッカー解説の仕事を始めた頃はもっと堅い、「よそいき」の解説をしていたこともあります。それが少しずつ、自分の素が出てきたというか。サッカーも盛り上がらない試合がありますから。大きく点差がついたり、チーム力の差が大きい試合は選手も観ている側も辛い。それでもなんとか盛り上げよう、いいところを探そうと考えています。

子どもを育てるときに犬を「猫」と教えていた

講演でも同じです。初めて講演のお仕事をいただいたときは話すことを全部紙に書き出して練習しました。出来は最悪でしたよ。ダメなんです、自分の言葉じゃなきゃ。たとえ流暢に話せない部分があったとしても、自分の言葉でしゃべったほうが伝わります。

もちろん講演を聞いてくださる皆さんの反応を見て話の内容を変えることもあります。でも100人が100人満足できる話はできるものじゃない。僕は賛成も反対も半分ずつの5対5でいいと思っています。そう思えれば、自分をさらけ出すのも怖くありません。僕は質疑応答も結構好き。どんな質問もウエルカムです。「女性関係以外、なんでも聞いてください」なんて、講演会の最初に言っちゃうんです。すると打ち解けてくれるし、いろんな質問をしてもらえます。

僕の場合は、自信があるというより、「自分はこれでいいや」「まあいいか」と思っている節があります。僕ね、子どもを育てるときに犬を「猫」と教えていたんです。僕もドイツで「シャイセ」という言葉を教わりました。ドイツの選手が皆使うから意味もわからず真似していて。食事中に口にしたら「何を言ってるんだ?」と。実は「クソ」の意味だった。

「違う」と気づいた瞬間に人は成長する、自信を持って言えるようになるということです。そう考えると、若いうちに恥をかいたほうがいいですね。僕だって一日の終わりに反省することがありますよ。今日はうまくいかなかったなあ! なんて。でも若い頃にオウンゴールを全国ネットで放映されたときよりはマシだなと考えると、「まあいいか」と思えるんです。

(構成=東 雄介 撮影=大槻純一)
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