中高年層の転職が増えている背景には、職業人生の長期化と労働力人口の高年齢化がある。近年、多くの企業において定年延長や定年後の再雇用期間の延伸が進む中、中高年層を有効な戦力として活用する会社側の必要性が高まっている。

しかし一方で、少子化により組織内における高年齢層のボリュームが増し、マネジメント層としてのポストはますます限られてきている。中高年層(45~64歳)の転職者数は現在(2018年)104万人だが、転職希望者数は271万人にも達しており、潜在的転職予備軍は2.6倍にも達する。職業人生の後半をもうひと頑張りしたいと思ったとき、社員側からすれば社内にもし活躍の場がなければ社外に目を向けてみよう、ということになるのだろう。

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これまでわが国の労働市場は諸外国に比べて硬直的と言われてきたが、今後は中高年層が先導して転職を活発化させ、人材流動を加速させる可能性がある。近年の転職者数の推移が続くと仮定し、三菱総合研究所において将来の中高年層(45~64歳)の転職者数を予測すると、2030年には130万人近くにまで増加する推計結果となった。

能力開発における3つの方法の違い

以上の分析でわかるように、中高年層の転職における重要なキーワードは、「技能や能力の活用」である。能力を発揮できるかどうかが、転職の判断やその成功の是非を左右している。言い換えれば、転職希望者にとっては、前職でどれだけ能力を高められるかが重要なのである。そこで、ビジネスパーソンが能力を高めるための取り組みについて概観してみよう。

社会人が企業に勤めながら、能力を高めるための方法としては大きく3つある。一つは、OJT(On-the-Job Training、職場内訓練)である。若手社員が職場の先輩や上司から実務を通じてスキル・能力・知識などを身につける教育訓練の方法で、日本の企業においては、この「OJT」が社員の能力開発・向上の中心的な手法となっている。

第二が、Off-JT(職場外での教育訓練)で、実務と切り離して行う教育訓練である。階層別研修、スキル研修、資格取得研修などがあり、業務上では体系的に学べない知識やスキルを獲得するために用いられ、OJTを補完する役割を果たしている。

最後が自己学習(一般には「自己啓発」と呼ばれているが、知識やスキルの獲得を含め広い意味合いとするため、ここでは「自己学習」とする。)である。社員自身が自らの意図で行うものであり、人材育成計画におけるプログラムメニューの対象外となっている場合が多い。明確な役割が期待されておらず、教育訓練手法としての企業による位置づけは低い。