UXファーストにビジネスチャンス

また、独身生活研究の第一人者として、テレビ・新聞・雑誌をはじめとする国内外のメディアで活躍中の荒川和久氏は自著『ソロエコノミーの襲来』の中で、「独身男性が外食に費やす費用は平均3〜4人の1家族分以上である」「全体的に食費をかけない独身女性であっても、外食費だけは1家族分以上を消費している」ことを指摘している。1人客の中で一定の割合を構成する単身世帯の消費ポテンシャルの大きさについても、1人客の取り込みを図る外食産業にとっては、無視できない要素といえるだろう。

今回は、多くの読者にとって身近な存在であると思われるガストの事例を起点として、いくつかの論点を提示し、考察を試みた。ガストを運営するすかいらーくグループでは、経営理念として「価値ある豊かさの創造」を掲げており、ミッションとして、「ひとりでも多くのお客様に安くておいしい料理を気持ちの良いサービスで清潔な店舗で味わっていただく」ことを定めている。
自らを「ファミリーレストランを運営する企業」と捉えるのか、「おいしい料理と快適な空間を提供する企業」と捉えるのかによって、経営方針およびそれに伴う施策内容は大きく変わってくる。カラオケボックスがオフィスとして利用され、カーシェアリングが仮眠スペースとして注目される現代。伝統的な外食産業においても、1人席をはじめとした消費者ニーズを捉えた「UXファースト」な事例が生まれつつある兆しを感じた。
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