顧客ニーズに迅速に対応。すかいらーくのマーケティング戦略

すかいらーくグループとしても、1人席の拡大については、マーケティング上の重要な施策の一つとして位置づけている。実際、2019年第二四半期の決算説明資料において、「売上増の取り組み」の中で、「顧客のニーズに迅速に対応」という項目が新たに加わっている。さらに細分化された項目として、「ガストの1人用ボックス席増加」「全店Wi-Fi整備・コンセント」が明記されている。

1人用ボックス席を導入した理由として、すかいらーくグループの広報は「食事だけでなく、スマホを見るなど自分の時間を過ごしたり、仕事をされたりする方の来店が増えているため」と述べており、今後1人用ボックス席の席数の拡大についても必要に応じて検討していくという。

気付くと何度も訪れてしまう店づくり

ガスト以外でも、近年の外食産業においては、いわゆる「おひとり様」需要の取り込みを図るべく、1人用ボックス席を設置するケースが目立ってきている。

たとえば、コンビニ大手のファミリーマートでは一部の店舗において、イートインコーナー「ファミマLounge」を設置したうえで、個室ブース席を提供している。もちろん筆者も利用したことがある。とくに虎ノ門ヒルズ店内の個室ブース席を利用した際は、ガストの1人用ボックス席にはおよばないが、作業環境として申し分ないという印象を受けた。

また、本拠地を福岡市に置くラーメンチェーン「一蘭」では、かねて完全個室システムを採用している。店内の光景はまるで「自習室」。席と席の間は壁で仕切られており、女性1人客でも来店しやすい設計となっている。筆者も一蘭には頻繁に訪れる。店員さんと顔を合わせることがないため、なんだか気楽だからだ。ラーメンを食べることに集中できる最高の環境だといえよう。

さらに、「焼肉のファストフード店」をコンセプトとして誕生した「焼肉ライク」では、1人1台の無煙ロースターで「1人焼肉」を楽しむことができる。「1人焼肉が楽しめる店」というコンセプトを明確に打ち出していることもあり、1人でも躊躇ちゅうちょなく入店できるため、気がつくと筆者も月に何度か訪れてしまう。また、注文に利用するタッチパネルのUI/UX設計がすばらしく、かなりスムーズにオーダーを行うことができる点もポイントといえる。