「うん」「そうだね」と肯定の返事を引き出す
交渉相手に友好的な態度をとっても、目標の追求に支障が出るわけではない。交渉相手が、交渉役としてのあなたと1人の人間としてのあなたは別人だという事実に気づき、心理学でいうところの「認知的不協和(人が矛盾するふたつの事実を自分のなかに抱えたときに感じる不快感)」を感じているときこそ、交渉を大きく前進させる絶好のチャンスだ。相手は自分のなかにある不快な感情を解消しようと、問題解決に協力的な態度を示して調和を取り戻そうとするからだ。
交渉相手との会話を、常に差し障りのない話題からはじめたほうがいいのはそのためだ。会話のなかで相手があなたに同意を示す回数が多ければ多いほど、交渉の重要な点においても同意する可能性は高くなる。そしてその場にポジティブな雰囲気を生じさせれば、最初から相手とのあいだにラポールを形成し、交渉が成立しやすい下地をつくり上げることもできる。
物件を案内中、家の立地のよさやベランダの眺めのよさなどについて相手からの賛同を得ている不動産業者は、その時点ですでに売買が成立する可能性を確実に高めているのだ。
あなたが恋人と喧嘩をして、部屋に重い空気がたち込めているときにも、この方法は有効だ。「もう20時じゃないか。何か食べようか?」といったなんでもない質問を相手に繰り返すのだ。相手から何度も肯定の返事を引き出しているうちに、空気はやわらぎ、行き詰まった状況は解消されるはずである。
新車が欲しいときは車種よりディーラーを先に選べ
交渉が難航した項目は書きとめておき、時間を置いてからまたその項目に取り組むようにしよう。はじめから、15分以上話しても進展の見られない項目は後回しにするなど、一定の時間制限を決めておくといい。そうすれば、5つ目の項目で行き詰まったまま深夜をむかえるような事態は避けられる。
良好な関係を築くための一番の近道は、第三者を介することだ。友人との食事の席で知り合った人とは、親しくなるのにさほど時間はかからない。あなたの同僚や知り合いのなかに、あなたの交渉相手と親しい人がいたときは、交渉の場に来てもらうか、少なくとも交渉相手にあなたを紹介してもらえるよう頼んでおくといい。紹介してもらう場合は、直接会って個人的に引き合わせてもらえれば理想的だ。
あなたが逆の立場でも同じことが当てはまる。交渉相手を、友人や知り合いを通して見つけるのだ。新しい車を買いたいときには、あなたが知っている誰かにおすすめのディーラーを教えてもらうといい。そうすればディーラーは、あなたの友人ネットワークと長期にわたってビジネスができると考えるため、取引を一回限りのものと見なす場合よりも、ずっと友好的に接してくれる。車を買うときには、車よりも先にディーラーを選ぶようにしよう。