交渉中に険悪になり、相手を怒らせたらどうすればいいか。ミュンヘン・ビジネススクールのジャック・ナシャー教授は「相手の意見に同調し、時には利用する。例えばデザイナーのポール・スミス氏は議論が紛糾すると、おもちゃを見せて場を和ませている」という――。

※本稿は、ジャック・ナシャー『望み通りの返事を引き出すドイツ式交渉術』(早川書房)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Richard Villalonundefined undefined
※写真はイメージです

怒った相手に反撃しても勝ち目はうすい

業務上のミスで、取引先を怒らせてしまった。相手は、あなたの非を責めつづけている。どのように対処するのがよいだろう?

相手があなたを攻撃するとしたら、その対象となるのはあなたの論理かあなた個人かのどちらかだろう。攻撃されれば私たちはつい反論したくなる。

だが反撃が功を奏することは滅多にない。反論された相手は、態度を一層硬化させてしまう場合がほとんどだからだ。それにもしその小競り合いに勝てたとしても、結局はあなたの負けだ。そのころには相手との関係は、もう修復不可能なほどのダメージを受けてしまっているからだ。自分に屈辱を味わわせた相手の顔を、誰がまた見たいと思うだろう? ほかの人の前で屈辱を味わわされたのならなおさらだ。

相手から攻撃されたときには、あなた個人への攻撃を、あなたが非難を受ける原因となった問題自体への攻撃にすりかえられるような、新しい解釈を付け加えるといい。

たとえばこんな感じだ。「あなたは私が家族を全然かえりみないと言いますが、私だって自分の一番身近な人たちと十分な時間を過ごせていないことを申し訳なく思ってるんです。これからはしょっちゅう出張に出なくてもすむプロジェクトだけにかかわれるよう、最大限努力するつもりですよ」