【田原】向こうの大学はどうでしたか?
【南場】学生がみんな、田原さんみたいでした。政治や経済について自分の意見を持っていて、侃々諤々と議論をするんです。そのころちょうど大統領選があって、「ロン(ロナルド・レーガン)はね」と候補者のことをファーストネームで呼んでいたのもびっくりでした。
【田原】世界だとそれが普通でしょう。学生が政治に興味を持っていないのは日本くらいのものです。
【南場】米国のエリート大学生はみんなデモクラッツ(民主党支持)。でも当時、経済については大きな政府より小さな政府に対する支持が強かった。ケインズには否定的な人が多かったです。
【田原】いまでも米国の大学生は民主党で、アンチ共和党ですかね?
【南場】大学やIT業界も含め、エリート層は多様性への寛容を非常に重視します。マイノリティへの差別に対する反発は強いので、いまもデモクラッツじゃないですかね。
マッキンゼーを選んだ理由
【田原】大学卒業後はマッキンゼーにお入りになった。どうしてですか?
【南場】直接のきっかけは、憧れていた先輩がマッキンゼーに入って、「南場さんも受けなさい」と言ってくれたことでした。じつは私、コンサルティングが何なのかよくわかっていなかったんです。でも、当時から競争率は高くて、みんなが行きたがる会社ならいいところなのかなと。
【田原】コンサルティングをやりたくてマッキンゼーに入ったんじゃなかった。
【南場】はい。私はとにかく一生懸命働きたかったんです(笑)。私が帰国して就活していたのは、男女雇用機会均等法施行の1年目。でも、日本企業は女性総合職といっても形だけのところが多い印象でした。外資系なら男女分け隔てなく使ってくれるんじゃないかと思って、その中でもとことん仕事ができそうなマッキンゼーを選びました。
【田原】住友銀行のドンだった頭取の磯田一郎が構造改革をしたとき、コンサルティングを頼んだのがマッキンゼーでした。天下の住友が米国の会社に頼むのかと驚いた記憶があります。それからマッキンゼーには注目していますが、いろんな人材を輩出していますね。今度外務大臣になった茂木(敏充)さんがマッキンゼーだ。
【南場】茂木さんとは一緒に働いています。当時はよくご指導いただきました。大先輩です。
【田原】南場さんはどんな仕事を担当していたのですか?
【南場】最初の2年間は、分析や情報収集。ほんとによく働きました。それからハーバードのビジネススクールに留学しましたが、ハーバードが息抜きに感じられるくらいでしたから(笑)。