酸素と二酸化炭素の増減はゼロ

確かに森林の草木は二酸化炭素を吸って光合成を行い、酸素を放出する。しかし、同時に呼吸によって酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出している。草木が盛んに光合成している若い森林ならまだしも、アマゾンのような古い森林では光合成と呼吸がほぼ釣り合っているので、酸素と二酸化炭素の増減はゼロと研究者が発言している。

ただし、火災によって二酸化炭素や炭素の微粉(ブラックカーボン)が大量に放出される。ブラックカーボンは太陽放射を吸着するために、地球温暖化の一因になるといわれている。

地球温暖化といえば、19年9月23日に米ニューヨークの国連本部で各国首脳が地球温暖化問題を議論する「気候行動サミット」が開催された。温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定が採択されたのが15年末。しかし、以降も温室効果ガスの排出増加に歯止めがかからない状況が続いている。そこでパリ協定の運用が始まる20年を前に、国連事務総長の呼びかけで実現したのがこのサミットだ。

各国首脳がパリ協定の目標達成のための対策をアピールした中で、会場を驚かせたのはパリ協定からの離脱を表明しているトランプ米大統領が姿を見せたことだ。米政府の姿勢をアピールするでもなく、わずか15分で退場した。

トランプ大統領は大統領選中から「地球は温暖化などしていない。でっちあげだ」と主張している。ブラジルのボルソナロ大統領も地球温暖化懐疑派だ。

世界の年平均気温が100年当たり約0.7度のペースで上昇していることは科学的に確かめられている。しかし、19年も世界各地で熱波や豪雨などの異常気象が観測されているが、そうした異常気象、気候変動と地球温暖化の因果関係は、いまだに解明されてはいない。たとえば地球自体の周期的な変化が気候変動の要因ならば、いくら温暖化対策をしても異常気象はなくならない。

それでも地球温暖化が人為的なものであり、二酸化炭素などの温室効果ガスを削減する温暖化対策に早急に取り組む必要がある、という考え方はヨーロッパを筆頭に国際社会の主流になっている。

対して、「地球温暖化の責任は先進国にある。温室効果削減を我々に押しつけるのは先進国のエゴ。俺たちにも成長する権利がある」というのが途上国の言い分だ。アマゾンの森林火災をめぐる温度差の根底にもこの対立がある。前述のとおり政治的には解決が難しい問題で、上から目線ではない世界ファンドを作るしかないだろう。

(構成=小川 剛 写真=AP/アフロ)
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