「イノベーションで株主還元」という自信を失いつつある

従来、アップルは新しい製品を発表し、先進国の消費者を中心に「どうしても欲しい!」という欲求をかき立て、人々のブランドロイヤルティを得てきた。そのためにイノベーションにこだわった。2012年まで約17年にわたり、同社が配当をせず、事業強化のために再投資してきたのはその考えからだ。結果的に、株主は株価上昇による大きな利得を享受できた。

しかし、iPhone 11の価格設定や機能を見る限り、アップルは次なるイノベーションを生みだせるか否か、重要な局面を迎えつつあるといえる。9月4日、アップルは2017年11月以来の社債発行を実施した。調達した資金の使い道は、自社株買いや配当などとされている。

これは、アップルが本業からの儲けによって株主などを満足させられるだけの成長の実現が難しくなっていることの裏返しとも解釈できる。世界的な低金利環境下、同社がさらなる社債発行を通して株主への価値還元を目指すなら、成長への期待が大きく揺らぐこともあるだろう。

トランプ政権の通商政策などによる世界的なサプライチェーンの混乱で、アップルのビジネスモデルは揺らいでいる。それに加えて、ファーウェイなど中国企業の台頭で市場シェアを高めていくことも難しくなるだろう。現状、アップルの経営陣からは新しい取り組みをどう進めるか、明確な方針は示されていない。今後、アップルの成長鈍化への懸念が高まりそうだ。

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