努力できる脳とできない脳の違い
それは、島皮質と呼ばれる、損得勘定を計算する働きをする部分です。つまり実験で作業を最後までやりきれなかった人たちは、「努力したってなんの意味があるんだ?」「こんなのやったってなんの意味もない」と、脳が損得勘定をして努力を無駄だと判断していたということです。
この他に、作業を最後までやり切ることのできない人たちは「左線条体」と「前頭前皮質腹内側部」と呼ばれる部分が働きにくくなっていることも明らかになっています。この部位は、報酬を得た時に快楽を得る「報酬系」と呼ばれる脳の一部で、何か報酬があった時に「やったー!」と喜ぶ部分です。この部分が活発化すると「頑張ろう!」と努力する原動力となってくれるわけですが、そこがうまく働いていないからこそ、最後までタスクをやり切ることができなかったというわけです。
このような、島皮質の働きが活発な人や、左線条体と前頭前皮質腹内側部の働きが活発でない人は、努力を続けるのが難しい脳だと判断できる……。これが、努力できる脳と努力できない脳の違いだと言えるわけです。
努力できない人は「努力しない努力」をしている
さて、この実験の話を聞いて、「頑張れる人と頑張れない人は生まれつき分かれるんだ!」「じゃあ、努力できない脳の持ち主はどう頑張ったって成功しないってことなんだな」と考えるのは間違いです。
実は、上記の実験や個別のヒアリングでわかったことは、東大生の中にも半分程度、「努力できない脳」の持ち主がいる可能性があるということです。
例えば東大工学部に通っている友達は、「自分は努力が長続きしないタイプだ」と語っていました。「長時間勉強したり、無駄な努力をしたりするのは自分は大嫌いだ。受験勉強も、いかに効率的にやるかを追求して合格した」と。
当然、彼は先ほどの実験も最後まで作業を続けませんでした。この他にも、先ほどの実験で作業を最後まで継続しない東大生というのも多く、言ってしまえば「努力できない脳の東大生」というのも一定数存在していたわけです。一体なぜ彼ら彼女らは、それでも結果を出すことができるのでしょうか?
それは、彼ら彼女らが「努力しない努力」をすることに対して非常に強い集中力を発揮できるからだと考えられます。
一般的に、集中力が続く人というのは「努力できる人」だというイメージがありますよね。努力家の方が優秀で集中力がある人、逆に「努力できない人」は結果も出せず、集中に向いていない……と思われがちです。