ゲーム業界が5年で2倍成長した理由

このモバイル環境を活用してビジネスを展開している筆頭はゲーム業界です。アップアニーのデータによると、2014年1月から2018年12月の5年間で日本国内のモバイルゲーム市場は以下のように106.9%(2.069倍)成長してきました。

任天堂やスクウェア・エニックス、セガ、バンダイナムコ、コナミといった国内大手ゲーム企業だけではなく、ミクシィやガンホー、LINEといった「デジタルビジネス企業」がこの領域に参入し、大きな収益を得ることができました。

たとえば2019年6月、国内で最も売り上げが多かったゲームは1カ月で100億円でした。近年、日本人の可処分所得が大きく増えていないことを考えると、生活者が他の消費行動を控えて捻出したものだと考えられます。企業側の立場から見ると、これだけ多くのお金が生活者の財布からゲーム企業に流れたと知ることは、コラボや合同キャンペーンといった企画に投資する判断につながっていきます。

外資系企業に日本人のデータを取られないために

他の業界も見てみると、ヘルスケア業界も成長していることがわかります。アップルやグーグルのストアの課金からなる2018年の収益額は、前年比134%と伸びています。「健康寿命を延ばして人生100年へ」などと言っていますが、この領域においてもモバイル環境にビジネスチャンスがあると思います。

市場が大きく成長している中で、また国としてもヘルスケア領域に注目していることも踏まえると、事業として取り込むことを検討しても良いかと思いますし、逆にこの市場の可能性を知ることで初めて検討の俎上そじょうに乗せることができるようになるはずです。

ヘルスケア領域のモバイルビジネスは、すでにアメリカや中国などでは急成長しており、日本への参入を準備しています。では、外資系企業がこの領域にサービスを展開すると何が起きるでしょうか。問題は目先のお金ではなく、日本人の体組成データや活動ログ、睡眠や食事といったライフスタイルデータが根こそぎ海外に抜かれていくということです。

過去にビジネスが大きく成長した実績とそれをリードしてきた経験が、時に先入観や思い込みとなって、正しく判断できないことがモバイルビジネス環境では往々にして起こります。わずか5年でメルカリが今のように成長し、キャッシュレスの領域に進出し、新たなエコシステムを構築するということは誰も予測できなかったと思います。

ところが今やメルカリはC2Cというビジネスモデルを定着させました。アップアニーのデータによると日本では1900万人弱が1カ月に1回以上メルカリを利用しています。20年以上の歴史を持つ、日本のデジタルビジネスの雄・ヤフー社の「Yahoo!プレミアム」の月間ID数2000万人という数字と比較すると、どれほど急速に普及したかよく分かると思います。