「いいプロダクトを作ったら売れる」わけがない

まだまだ根強く残っている思想だと思いますが、特に昭和の時代に現役でバリバリ働いてきた人ほど、「いいプロダクトを作れば売れる」「いい場所に店舗を出せばお客さんが来る」と考える傾向があると感じます。しかし、そのような時代はとうに終わっています。

実際に過去お会いした経営層の方々の中には、この「プロダクトアウト偏重」と「オフラインがすべての思考」が強く、デジタル化によって生活者や顧客のデータを取得して分析し、マーケットインの発想を取り入れることや、一時期いわれていた「オムニチャネル」への投資の意思決定をしていませんでした。しかも、「今までのやり方ではビジネスが成長しなくなっている」と危機感らしき言葉を口にするのにもかかわらずです。

特に印象的だったのは某小売業の大手企業の役員です。私がデジタル化の必要性を、国内外の企業の取り組みやビジネス効果をファクトベースでお伝えしていたときのこと。その方は「私が店舗にいた頃は、お客様と顔を合わせてナンボの世界だった。そしてその信頼関係でお客様に愛されていた」と言いました。「過去の経験」にしがみつき、当時の成功体験を自ら否定するような取り組みには肯定的ではないというスタンスを貫いていたのです。

大きなリスク無く世界中にビジネス展開できる

今の時代は、あらゆるものがデジタル化しています。もしくはデジタルと接続できるようになっているので、企業はデータ(ファクト)を簡単に手に入れることができます。これらのデータは次の戦略を考えたり、意思決定をしたりする際に「ファクト」になるため、改めてこれを事業戦略や意思決定に取り入れることを真剣に考えるだけの価値はあります。

たとえばモバイルビジネスをするなら、AppleとGoogleが提供している「アプリストア」というプラットフォーム上に自社の商品を簡単に出品できます。Appleは200カ国以上にストアが展開されているので、自社の商品を世界中の店の棚に並べることができます。

しかもそれらの「商品」は実態を伴わないため、在庫リスクはゼロです。売れなければストアから削除すればいいし、売れるのであればより多くのマーケティング予算を投下するという意思決定をすればよいのです。企業にとって、各国向けにローカライズ(現地語への翻訳など)するだけで、大きなリスク無くビジネスを世界中に展開できます。