19年1月にはアメリカで、アルツハイマー型認知症との関係をさらに補強する論文が発表された。アルツハイマー型認知症の人の脳には歯周病菌が生み出した「ジンジパイン」という酵素が存在したという内容だ。

歯周病との関わりを指摘されているのは、ほかにも骨粗鬆症やリウマチ、早産・低体重児、EDなどがある。

こうした現状を踏まえれば、健康寿命を長いものにするためには、日頃からの歯や口腔のケアが不可欠であることは明らかだろう。もし、それが疎かであれば、全身病気のドミノ倒しになってしまうリスクもある。

「歯が若返ると、自然と体も心も若返るのです」

と語る若林さんによれば、体を老け込ませないためには、体だけでなく歯のケアも大事という意識が高いのは、いわゆる成功者に多いという。

「弁護士やIT関連の起業家など経営者、また管理職のビジネスマンなどが私のクリニックに足しげく通っています。みなさん、仕事でかなり忙しいはずなのですが、予約して定期的に受診します。それができるのは、自己管理&時間管理能力の高さゆえですが、それに加え、歯のケアをサボって歯が悪くなってから治療すると結果的に医療費が高くついてしまうという、先を読む力があるからではないかとも思っています」

「口の中」がヤバいと医療費が高くなる

歯周病にかかっている人はかかっていない人に比べ、どれだけ余計に医療費がかかって損をしているのか。

例えば、自動車部品世界シェア第1位のデンソーの健康保険組合が被保険者の医療費を分析した調査によれば、歯周病の人は非歯周病の人よりも歯科だけでなく、歯科以外の病気の医療費も1人あたり年間平均約1万6000円多くかかっていた。

そう考えると歯科のかかりつけ医を持ち、定期的に受診し、歯石とりやクリーニングなどをすることで、恐ろしい歯周病を回避するとともに、生きるうえでのコストを低く抑えることができるともいえるのだ。

若林健史(わかばやし・けんじ)
歯科医師
若林歯科医院院長。日本大学客員教授。日本歯周病学会理事、日本臨床歯周病学会副理事長。歯周病専門医・指導医として講演多数。