ドルと違って金なら「信用リスク」を気にしなくていい
中国やロシア、インドなどの中央銀行はドル安への警戒から外貨準備資産の一部を金に振り向けている。外貨準備の主な資産であるドル(米国債)の保有と異なり、金を保有する際には信用リスクなどを気にする必要がない。トランプ政権が各国に対して圧力をかけ、自国の要求をのませようとしているだけに、一部の中央銀行による金の保有は増える可能性がある。
米中の貿易摩擦の動向に加え、米国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)も重要だ。米国経済は依然として相応の安定感を維持している。ただ、ゆるやかな景気の回復がいつまでも続くことはあり得ない。米国経済は徐々に景気のピークに達し、いずれ景気減速がより鮮明化するだろう。
もし米中の摩擦が激化すると同時に、米国経済がさらに減速すれば、世界経済にはかなりの下押し圧力がかかる。その場合、ドルの減価圧力は一段と強まり、金の価格は上昇するだろう。今後、金の価格がどのように推移するかは、世界経済の先行きを考える上で重要だ。
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。