投資家は金市場から資金を引き揚げ、株式に投じている
金相場はこのところ軟調な展開となっている。メディアによっては「下落が止まらない」と書いているところもある。だが、金は今後も必ず上昇していく。だから、私はいまが金投資のラストチャンスだと考えている。私がそう考える理由を解説していこう。
金価格は3月8日に一時1676.10ドルと、昨年6月5日以来の安値を付けた。このような下落基調となった背景には、米金利の上昇とドル高がある。将来のインフレ懸念の台頭で米金利が上昇し、それを受けてドル高基調となったことが、ドル建てで取引される金相場を押し下げているのである。金利は上昇すれば、利息を生まない金は売られやすくなる。今の金利上昇は、金相場を直撃しているといえる。
また、このような状況を受けて、投資家は金市場から資金を引き揚げ、株式に資金を投じているようである。BofA(バンク・オブ・アメリカ)の最新の週間調査によると、3月10日までの1週間で投資資金が金・債券から株式にシフトした。株式投資に315億ドルが流入する一方、金からは18億ドル、債券からは154億ドルが流出した。安全資産である金や債券が売られ、リスク資産である株式が買われる動きがいまも続いている。
これからはインフレに対処すべき20年間になる
現在の投資家の最大の関心は、金利動向のようである。米金利が上昇すると、株価が不安定化し、投資家は慌てて株式を売却する動きを強める場面が何度も見られている。また、同時に金も株式の受け皿になるどころか、売られている。もっとも、資金フロー全体では、上記のように依然として株式に資金が流入している。金利上昇に弱いハイテク株は売られているが、むしろ金融株は買われており、株式市場の中でもセクターローテーションが起きている。このように、投資家は依然として投資対象の中で株式を選好している。とはいえ、金利の上昇にも警戒感を解いていないといえる。
筆者は、今後も米金利は上昇することが確定的と考えているが、ポイントは市場がこれを理解し、この状況に慣れていくことができるかどうかであると考えている。
いまのように、米国債利回りの上昇を嫌気し、米連邦準備制度理事会(FRB)追加的な政策を催促しているようでは話にならない。原油や銅などのコモディティ価格が上昇基調を強める中、これからはインフレ率が上昇し、金利は上昇していかざるを得ない。1981年以降、40年にわたり低下してきた米金利は、2020年に底打ちした。これからはインフレに対処すべき20年間になるだろう。この点を理解せずして、金融市場を見ていくことは非常に危険である。