米国のインフレ率は年内に最大で5%にまで上昇する可能性

この点を理解しているのは、ほかでもないFRBであろう。FRB関係者は、今後の金利上昇は必然であることを、表現を変えて示唆しているが、多くの市場関係者はこの点に気づいていないようである。

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そもそも、FRBの金融政策の目標は、インフレ率2%の達成である。まだそこまでにも至っていない中で、金利上昇に懸念を示すはずもない。無論、金利上昇のペースが速ければ、それは懸念として牽制する可能性はあるが、一定のペースでのインフレ率の上昇は容認することになる。

まして、インフレ率が2%を超えても、これが平均的に2%超になるまでは利上げをしないと説明している。したがって、FRBが利上げを示唆するのはまだかなり先である。この点は、市場には安心材料である。

今後は金利の上昇ペースに目を配る必要がある。筆者は、年内に米国のインフレ率は最大で5%にまで上昇する可能性があると考えている。その結果、米長期金利は2.5%から3%程度にまで上昇するだろう。このようなシナリオを想定しておくことが、今の市場動向を見極めるうえでの大前提であると考えている。

しかし、これは多くの市場関係者からみれば、かなりトリッキーな見通しであろう。だからこそ、わずかな金利上昇に多くの投資家がおびえているのだ。株式市場はこの程度のインフレ率を許容しなければならないのである。

インフレ率が3%を超えると、金投資のリターンは大幅に大きくなる

年内は、株価は堅調に推移するとみているが、インフレ率の上昇は実質金利の低下をもたらし、むしろ金相場の上昇を後押しすることになるだろう。インフレ率が3%を超えると、金投資のリターンは大幅に大きくなる。このことを知らない投資家が多いようである。これは、過去のデータが示す「事実」である。いまはインフレ率がいまだ2%を下回っている。したがって、インフレ率が上昇する前のいまこそが、金投資のラストチャンスになると考えられる。

FRBは短期金利を低い水準にとどめる一方、長期金利は放置するだろう。市場ではツイストオペなどに期待を寄せているようだが、それは無駄な期待だと思われる。FRBは日銀の金融政策の失敗をよく分析している。

マイナス金利は導入しないことを言明しているのは当然であり、長期金利の調節にも消極的なのはそのためであろう。FRBが金利上昇に懸念を示し始めるのは、長期金利の動向ではなく、インフレ率の上昇ペースが速まったときである。この点を間違えないことである。