米中の「経済冷戦」で、中国経済は明らかに減速
この中、多くの投資家が資産の保全のために金を買い求めた。その結果、2011年秋口、金価格は1800ドル台にまで上昇した。世界経済がリーマンショックの後遺症から立ち直り切れていなかったこともあり、投資家は資産の価値を守るために金への需要を強めたのである。
現在、市場参加者の多くが米中の貿易摩擦の激化を懸念している。すでに、中国経済の専門家らの間では、米中が“経済冷戦”に突入したとの指摘まであるほどだ。制裁課税やその報復措置の影響から中国経済の減速は鮮明であり、新興国にも影響が波及している。先行き不透明感の高まりから金への需要が高まっている。
金価格には、実需も影響する。もともと、中国とインドでは宝飾品のために金が重宝されている。現在、インド経済は好調だ。個人の消費は堅調に推移している。それに加え、1~3月期のインドでは吉日が多く、宝飾品のための金需要が支えられた。
海外投資家は金の保有動機を一段と強める
5月下旬以降の金価格の上昇は、投資家が先行き不安を高めていることに影響された側面が大きい。
足元、世界経済はそれなりに安定している。気がかりなことは、米中の通商摩擦が激化する恐れがあることだ。すでに米中の対立は世界のサプライチェーンを混乱させ、各国の製造業の景況感を悪化させている。この状況が続くと、徐々に米国をはじめ世界経済の減速懸念が高まるだろう。
この見方が正しいとすると、投資家は金の保有動機を一段と強めるだろう。金の価格に連動するETF(上場投資信託)による金の保有量も一段と増加する可能性がある。ETFは現物の金を裏付けにして発行されることが一般的であり、運用会社はETFの価値に見合った金を保有しなければならない。