時間の使い方を上司は教えよ

話ができないから、問題点を指摘し、あるべきコンビニの姿をパワーポイントで説明する資料をつくり、それを持って「店長をお願いします」と訪問していました。店長が夜勤明けでいないと、そのまま資料を持ち帰り、次の日に再訪問します。これでは、20分で済む仕事に20時間かかってしまいます。相手の店長に「おまえの言うことなんか聞けるか」と言われたら、上司の部長にもう1度説得してもらえばいい。自分だけで1週間、1カ月かけて説得することは時間のムダづかいです。

そういう時間の使い方、時間に対する価値観を自分の中でどう持つかを考えないといけません。何も意識せずに仕事をすると、時間に拘束されるだけで、何十時間かけても結果は出ません。「毎日忙しい」という誤った先入観にのみとらわれてしまいます。

部下に時間を上手に使うことで得られるやりがい、生きがいを教え、積極的な人間に変えることも上司の仕事です。やりたくもないことを、自分は押しつけられているという“やらされ感”で仕事をすると、10時間現場にいたとしても、その時間はまったくのムダです。

そういうことを言い続けたことで、ファミリーマートは変わってきました。次なる世代を担う若手幹部が、自分たちでこうやるんだと考え、それを社長も聞いてくれると信じてくれた結果だと思います。若手幹部を役員に抜擢したのを見て、自分たちにもそういう道が開けていると若い社員も自覚するようになりました。当然、仕事のやり方も変わります。彼らもまた、時間の使い方と時間の価値を意識するようになりました。

(辻 和成=構成 永井 浩=撮影)