いつも「逃げ出す」タイミングを伺っていた
最近のコンビニエンスストアでは、デザートや飲料、総菜、お弁当など、プライべートブランド商品が個性を打ち出している。ファミリーマートでは、昨年10月から「ファミマル」を展開。そのブランド推進に携わっているのが商品業務部副部長の柘植さんだ。それまで加工食品・菓子グループを率いて、菓子の中でも主力のチョコレート商品を担当してきたが、「そもそもチョコが苦手だったので、苦労しましたね」と苦笑する。
変化の激しいコンビニ業界で二十数年、スーパーバイザー(SV)、営業企画、マーケティングなど渡り歩いてきたが、もともと「コンビニは興味がなくて、いつ逃げ出そうかといつも考えていました」と、意外な過去の本音を明かす。
「担当が男性だったらなぁ…」
学生時代には社会の教員免許を取り、教育関係の仕事を目指していた。だが、就職したのは地元の名古屋に拠点を置くサークルKジャパンだった。入社後の一年半は店舗勤務が続き、そこでまずくじけそうになったという。
「周りの同級生が、入社した企業で新たな仕事に携わって『大変だけど楽しい』とキラキラする中、自分は店舗勤務と環境も違い、いろいろ大変に思ってしまい ……。逃げ出すためには何か資格を取ろうと思い、カラーコーディネーターの勉強を始めました」
翌年には女性社員一期生として、店舗を指導するスーパーバイザーを任されたものの、そこでも肩身が狭かった。加盟店のオーナーには何かトラブルがあると「担当が男性だったらなぁ……」と、若い女性の力不足を指摘される。
配属先は男性ばかりの職場でどこか仲間外れの空気を感じ、誰にも相談できない。着任当初はつらく、半年ほどで5キロ痩せてしまった。
「一年くらい経って、やっとオーナーさんとの関係がつかめ、仕事内容も全体がわかるようになってきた。 もうちょっと頑張ってみようかなと思っていたのですが……」