ファミリーマートが2021年3月から販売している「ラインソックス」が累計140万足超えのヒット商品となっている。ソックスをはじめとするオリジナルブランド「コンビニエンスウェア」の仕掛け人は、2021年に社長に就任した細見研介氏だ。その狙いはどこにあるのか。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授が聞いた――。(前編/全2回)

※本稿は、デジタルシフトタイムズの記事「DXが進む時代だからこそ求められるリアル店舗の必要性とは。」(3月3日公開)を再編集したものです。

ファミリマートが税抜390円で販売しているラインソックス
画像提供=ファミリーマート
ファミリマートが税抜390円で販売しているラインソックス

累計140万足超の大ヒット商品になった「ラインソックス」

【田中】コンビニ業界が最も大変な環境の中で社長に着任されてちょうど一年。矢継ぎ早にさまざまな挑戦をされた一年だったと思います。今、振り返ってみてどう感じられますか。

【細見】昨年、2021年はファミリーマートにとっては創立40周年という節目の年でした。40周年という節目でその前からいろいろな企画が進行していたこと、そして日本全国でコロナのショックもだいぶおさまり、落ち着いて対応していく局面に入った一年だったことです。会社のリズムを整えるという意味では、さまざまなパーツがそろっていました。

【田中】細見社長はブランドビジネスに長年従事してこられて、繊維畑も長かったですよね。まずは、細見社長のブランド感をお伺いしたいです。ブランド、ブランディングをどのように定義していますか。

【細見】いかにトレードオフをしていくかが重要です。行ってはいけない領域を明確にしていく。ブランドビジネスはもちろんビジネスですから、お金儲けもしなければいけません。簡単にお金儲けができる可能性がある分野だが、ブランドとしては行ってはいけないという分野がある。ブランドというものは自然にポジションが決まっているのです。そこをいかにエンハンス(強化)していくのかが大事だと思います。

【田中】ブランディングおよびマーケティングの要諦の一つとして、ブランディングのエクステンションがあります。どこまでエクステンションできるのか、すべきなのか、してはいけないのか。そこが要諦ということですね。

【細見】そうですね。

実店舗はデジタルとの接点になる

【田中】ファミマの社長として大胆な挑戦をされ、今ではコンビニで販売するウェアや靴下などの「コンビニエンスウェア」がヒット商品に成長しています。

ファミリマートが税抜390円で販売しているラインソックス
ファミリマートが税抜390円で販売しているラインソックス(画像提供=ファミリーマート)

【細見】当社のシンボルカラーの線を入れたデザインなどの「ラインソックス」の販売は、3月末に累計140万足を突破しました。

【田中】ブランディングの要諦について、どこまでやるのかやらないのかが重要というお話がありましたが、今ファミマの店舗に行くと、かなり小型の店舗でも「コンビニエンスウェア」が置いてあります。どこまでブランドをエクステンションしていかれるのでしょうか?

【細見】加盟店さんもいらっしゃいますし、本部の押しつけだけではできません。品質の良いものを提供し、着ていただいて「これが良い」と実感していただかないといけません。リアルのお店では場所に限りがあるので大きな仕掛けや多くの商品を置くことは難しい一方で、必ずデジタルとの接点になっています。店舗が入り口となってデジタルに広げていくことは、将来大きな可能性があると思います。