1カ月1000円以内の課金で事業をスタートした企業もある

「クラウドコンピューティングも同じようなものです。私どもは非常に多くのコンピュータを所有、管理しています。お客さまは初期投資をしなくとも、必要な分だけ、使った分だけコンピューティングサービスを受けることができます。しかも、事業の必要性に応じて、最新のコンピュータを即座に1台から数千台まで使うことができます」(長崎)

同社が提供するコンピューティングサービスの特徴は安価ということだろう。

たとえば、ある起業家がITシステムを使った独自のサービスを始めようと考える。

「そうだな、エンジニアを雇って、サーバーを契約して、従業員にPCをもれなく用意して……」

そんなことをやっていたら、大事な資金がすぐに枯渇してしまう。AWSはそんな需要を見越してスタートアップ企業のためにサービスをしている。

アマゾン ウェブ サービス ジャパンの長崎忠雄社長(撮影=石橋素幸)

同社広報担当者はこんな例を挙げた。

「従量課金制のため、サービス料金はどれくらい使うかによります。例えば、仮想サーバーで1時間1円というのもありますし、データ保存1GBあたり1カ月で2円ほどという料金設定もあります。あるスタートアップ企業は1カ月1000円以内の課金でビジネスをスタートしています」

確かに安い。

キヤノン、キリンなどの大企業も顧客に名を連ねる

ただ、顧客はスタートアップ企業だけではない。大企業だってAWSのクラウドコンピューティングを利用している。そのほうがコストを下げられるだけではなく、最新鋭の多様なシステムを利用することができるからだ。

思えば現在、同社が行っているサービスは通信企業や通信機器の製造販売企業がやるべきことだ。しかし、Amazonの創業者、ジェフ・ベゾスのほうが早くからクラウドコンピューティングの価値と将来性に気づいていたということなのだろう。

AWSは現在、世界190カ国以上でサービスを展開し、数百万の顧客がいる。

日本企業ではキヤノン、キリン、ソニー銀行、電通、資生堂、マツダ、毎日新聞、日本テレビ、中央大学、電気通信大学など10万以上の顧客を有する。スタートアップから成長した企業ではAirbnbをはじめ、メルカリ、ネットフリックス、スマートニュース、ビズリーチなどがある。

「大企業の場合はデータの分析、経理システム、バッチ処理、デジタライゼーションなどに利用されることが多いようです。一方、スタートアップ企業の場合はシステムの立ち上げから始まって、ありとあらゆることに当社のクラウドコンピューティングを利用されています」(長崎)