富裕層は富を増やし続け、勤労世帯の所得が減る
東京社説はまずこう指摘する。
「著しい収入格差は世界に広まっている。格差を研究する国際非政府組織(NGO)、オックスファムは2018年、世界の富豪上位26人の資産約150兆円と、世界人口の半分にあたる38億人の貧困層の資産がほぼ同額だと報告した。数字を見て資本主義の暴走を感じはしまいか」
「国内に目を向ければ、企業が収入を人件費に回す労働分配率は約66%で、石油ショックに苦しんだ1970年代中頃の水準まで落ち込んでいる」
「富裕層は富を増やし続け、勤労世帯の所得が減る流れが国内外で定着している」
「資本主義の暴走」「労働分配率の低さ」「富裕層と勤労世帯の富の格差拡大」と、社会の底辺に目を向けようとする東京新聞らしい指摘である。この後に東京社説はゴーン氏を取り上げる。
巨額報酬は、資本主義の「暴走」と「ゆがみ」か
「保釈されたゴーン被告は日産会長として一時、年十億円を超す報酬をもらっていた。これに対し、株主総会で批判が出ていた」
「(日産の)経営再建に際し多くの系列会社が取引を停止され、社員も大量に去らざるを得なかった。多大な犠牲を払った上での再建だ。ルノーも再三困難に直面した。雇用不安を抱える従業員や株主らが、突出した報酬を批判するのは理解できる」
なるほど、ゴーン氏の「株主総会で批判され報酬」と「大きな犠牲を払った会社の建て直し」は問題である。ゴーン氏が富裕層であることは間違いない。東京社説は最後にこう訴える。
「ゴーン被告の巨額報酬は、格差の現実を改めて可視化し人々に提示した。それが資本主義のゆがみであるなら、たださねばならないだろう」
資本主義の「暴走」と「ゆがみ」。この2つの表現は実に分かりやすく現代社会を捉えていると思う。