運用の厳格化に注意しよう

ただ、法定の数値だけに注目していると、思わぬところで躓きかねない。改正後は運用が厳格化され、いままで事実上許されていたことが通用しなくなる可能性があるからだ。たとえば過半数労組だ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/tunart)

「労使協定は、労働組合が非正規社員も含めて従業員の過半数で組織されていないと有効になりません。以前から法律上はそうでしたが、過半数労組ではないのに36協定を結んだ企業もあった。今回から労働基準監督署に提出する書式が変わり、労組の名称を書く欄に、過半数労組かどうかの確認が括弧書きで加わっています」

新協定届は、「時間外労働をさせる必要のある事由」を書く欄も拡充された。特に、特別条項を設ける事由として認められるのは、製品トラブル、クレーム対応など、一時的・突発的なものに限られる。単なる人手不足といった理由では残業させられなくなる。

「改正後の時間外労働の上限は単月100時間ですが、現在でも特別条項が80時間を超えている企業は労基署がチェックしており、自主点検表が送られてくるなどして、残業の実態を提出させられます。厚生労働省の『新労使協定の書き方例』には、改正で規制に休日労働を含むことになるため、上限が90時間と書いてありました。しかし、これほど多いと、やはり労基署の目に付くでしょう。書き方例よりも残業は減らすべきです」

そもそも法律ギリギリまで働かせるという発想では、人を採用できない時代になった。法律を守るのは最低限。働き方改革を進めて、余裕を持って対応したいところだ。

(答えていただいた人=社会保険労務士 岡田良則 写真=iStock.com)
関連記事
"平成32年"と記載の契約書は有効なのか
会社が絶対手放さない、優秀人材6タイプ
非正規一筋20年“中年フリーター”の悲哀
勢いで「早期退職金」もらうバカの末路
なぜやる気のある人は会社で疎まれるのか