メールを書くときは「原則10行」

宅配ポータルサイトの「出前館」を運営する夢の街創造委員会社長の中村利江さんも、「メールを書くときは原則10行ほど。それを超えそうなら、段落をつけたり箇条書きにしたりして読みやすくするように心がけています」と、メールの短さやわかりやすさを重視する。

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最近の森川さんは、さらにアグレッシブだ。「いまはメールよりもLINEなどのチャットを活用しています」という。

「チャットの場合は、わかりやすさと同時にスピードが大事ですから、ほぼ1時間以内に返信するようにしています」

一方、メールの出番は「物事を整理してシェアするようなとき」という使い分けである。

ネットイヤーグループでも、社内での意思疎通はほとんどがチャットツールを通じて行われるようになったという。「若手はほとんどメールを使わなくなりました。ただ、セキュリティ上の問題があることから、仕事での利用は法人向けのツールに限定しています」と石黒さん。

伝統工芸品の販売を手がけるベンチャー企業「和える」社長の矢島里佳さんも、「社内ではSlackが大活躍です。メールは社外向けに使うだけになりました」と証言する。とりわけネット系企業やベンチャー企業で、メールからチャットへの移行が起きているのだ。

もっとも、石黒さんによれば、社外に向けたメールでは「本来の手紙形式を踏襲して丁寧なメールを出すことも少なくありません」。夢の街創造委員会の中村さんも「初対面の方への礼状は、できるだけ直筆の手紙にしています。メール社会だからこそ、手紙の効果が大きくなっていると実感しています」という。

チャット型だけではなく、手紙型のメール、さらには手紙もまだ健在なのである。

読まれないという「割り切り」も大事

それがなぜなのかを明快に読み解くのは、マネックス証券社長の松本大さんだ。

「『書く』ことの前提は『読まれる』こと。手紙もメールもコミュニケーションの手段であり、主役は相手なので、自分の感覚よりも読んでくれる相手の感覚に合わせるのが当然だと思います」(同17年7月3日号)

何かを伝えようとするとき、どの手段を使い、どのようなスタイルで書くかは、送り手である自分ではなく受け手の事情によって決めるべき。だから松本さんは、手紙やハガキを出すときもあれば、長文の丁寧なメールを書くときもあるし、チャットを使うこともあるという。