LINEなどチャットツールの普及を受けて、メールの書き方は「手紙型」から「チャット型」へ変化しつつあるという。21世紀、超多忙なビジネスパーソンはどんなメールを書いているのか。5人の第一線経営者に取材した。

伝わるメールの3原則

ビジネスにメールが使われ出したのは1990年代後半のことである。当初は手紙やファクスの代用という側面が強く、便利ではあるが宛名や挨拶、署名などに関する少々煩雑な書式が付きものだった。それから20年ほどが経ち、メールの書き方も大きく変わってきている。

ネットイヤーグループ社長の石黒不二代さんは、変化の原因と方向性を次のように分析する。

「これまでは手紙の形式を踏襲して、宛名を書き、堅苦しい挨拶を入れてから本題に入るというのがメールの作法でした。しかし、チャット機能によるスピーディなやり取りに慣れてしまうと、そうした形式が無駄に思えるのか、チャット風の簡略化したメールを送る人が増えてきたように思います」(プレジデント誌2016年2月29日号)

プライベートではLINEやフェイスブック・メッセンジャー、ビジネスではSlackといったチャットツールが浸透したことで、メールの書き方が簡素化しているというのである。

手紙やビジネス文書の書式に則ったこれまでのメールを「手紙型」とするなら、21世紀のメールは「チャット型」と呼ぶのがふさわしい。

では、第一線のビジネスパーソンは実際にどんなメールを書いているのだろうか。

たとえばC Channel社長の森川亮さんは、NHNジャパン(現LINE)社長時代に「パソコンからメールを書くときは5行ほど、スマートフォン経由なら1~2行になりますね」(同12年3月19日号)と明かしてくれた。さらに次のような原則を守ることで、効率的な意思疎通ができると述べている。

①ストレートな表現で書く
②結論を伝えるときは「件名」欄に結論を書く
③場合によっては顔文字を使う

いいたいことを効率的に伝えるには、婉曲表現を避けてストレートに書くことが大事である。また「件名」を有効に使えば手間を省くことにつながり、本文を短くする効果がある。

だが、それだけでは受け手の気分を害し、コミュニケーションの効果を損ねるおそれもある。だから森川さんは「顔文字を使う」などの気配りを加えることで、そうしたリスクを最小化するのである。