家族名義の通帳も故人の財産とみなされるケース

故人(資産家)の名義ではなく、家族名義の預貯金口座のお金も、相続税の対象になる場合があります。資産家は、自分のお金を家族名義の通帳に預けるようなことが多々あります。ところが、名義が誰であっても、相続税では「実際にその通帳を管理している人は誰か」「誰のお金が入っているのか」ということが問われるのです。

資産家自身がその通帳をつくっていたり、資産家のお金が入っていたりするのであれば、それが家族名義であっても、その資産家のものとみなされ、相続時には相続資産に加えられるのです。たとえ、配偶者名義の預貯金口座であっても同様です。配偶者が、自分で働いているなどの理由がないのに、自分の名義で多額の預貯金を持っていた場合は、配偶者の所有物ではなく、故人の所有物として、相続財産に加えられるのです。

配偶者のへそくりも「相続財産」になる!

では、故人が毎月渡していた生活費の中から配偶者がへそくりをしていた場合、それは、相続財産になるのでしょうか?

答えは「なる」です。配偶者が自分で仕事を持つなどしていて、それが自分のお金だということがわかれば別ですが、もっぱら故人の収入に頼っていた配偶者が、その収入の中からへそくりをしていた場合は、故人の死亡時に相続財産に加えられてしまうのです。(ただし、相続税では、配偶者は「最大1億6000万円の配偶者控除」を受けることができますので、よほど巨額のへそくりをしていない限りは、相続財産に加えられたところで、相続税の支払いの義務は生じないでしょう)

とはいえ、厳密に言えば、相続財産には加えられるので、相続分割の際の対象には入ることになります。つまり、相続人が遺産を分けるときの遺産には加えられるということです。法的なことを言えば、「へそくりも、いったん差し出して、相続人同士で分け合わなくてはならない」ということです。現実にはそこまでお人好しな人はいないかもしれませんが……。