若くして亡くなった人の相続も要注意

預貯金やこれといった資産がない若い人が亡くなったときでも、条件によっては相続税がかかってくる可能性があります。というのも、たとえば「生命保険の保険金」も相続財産にカウントされるからです。若いうちに結婚して子どもを持ったような人は、子どものために自分に多額の生命保険をかけているという場合も多いはずです。そういう人が死んだ場合、残された家族に相続税が発生する可能性があるのです。

また、若くして住宅ローンで家を購入したような人の場合にも、その可能性があります。住宅ローンの場合、契約者に生命保険がかけられているケースが多く、ローンの支払いの途中で死亡した場合は、ローンの残額はその保険金で支払われることになっています。だから、まだ多額のローンが残っていたとしても、死亡した時点でローンは完済されるので、その家の資産価値が一定額を超えていれば、相続税がかかるのです。

自分は若くて貯金もないからといって、相続税は関係ないなどと安心はできません。

死亡前後に預金口座から現金を引き出すのはムダ

相続税では、基本的に故人が残した「金銭的価値のある資産」はすべて課税の対象となるとされています。相続財産として真っ先に思い浮かべるのは、預貯金、有価証券、金融商品、不動産などだと思いますが、それだけではありません。絵画や骨董品やアクセサリーなど、“金目のもの”はすべて課税対象になるのです。

『税務署・税理士は教えてくれない「相続税」超基本』(大村 大次郎著・KADOKAWA刊)

ここから、「相続」についてみなさんが誤解しがちなことについて触れておきます。「預貯金」が相続税の対象になってしまうからといって、その人が死亡する前後に多額のお金を引き出したとしても、そのお金は当然、相続税の対象になります。税務署は、預貯金の口座については、その詳細をチェックすることができます。だから、死亡前後に多額のお金が引き出されていれば、それは当然、知るところとなります。というより、むしろ、こういうことをしようとするケースが非常に多いので、税務署は死亡前後の口座のお金の出し入れは必ずチェックするのです。また、死亡前に引き出されたお金であっても、相続税の対象になることがほとんどです(医療費や葬儀費用、墓石等に使われた場合は別として)。