「平和的な台頭」路線に軌道修正できるか

細川昌彦『暴走トランプと独裁の習近平に、どう立ち向かうか?』(光文社)

かつて最高指導者、鄧小平(とうしょうへい)氏が提唱した「韜光養晦(とうこうようかい)」つまり「才能を隠して、内に力を蓄える」が中国の外交戦略であった。しかし2012年、習近平政権は大きく転換して、国威発揚をめざして、「偉大なる中華民族の復興」を掲げた。2017年にはこれを党規約に明記したのだ。対外的にマイナスがあっても、国内統治のためには、あえてそうせざるを得なかったとも見ることができる。

その産業版として掲げた「中国製造2025」は習近平主席肝いりの看板政策だけに、面子と統治のために下ろすに下ろせない。

中国がこうした国家主導の市場歪曲的な経済システムを軌道修正せざるを得ないことに気づいたとしても、共産党政権の国内統治の手段になっているだけに、どこまでそれをやり切れるか。「平和的な台頭」路線に軌道修正できるかどうか、恐らくそこが今後の歴史的に重要なポイントだろう。

中国にとって内外ともにいまだ着地点の見えない長い戦いが始まった。

細川昌彦(ほそかわ・まさひこ)
中部大学 特任教授
1955年生まれ。77年東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。通商政策局米州課長、貿易管理部長など通商交渉を最前線で担当した。在職中にスタンフォード大学客員研究員、ハーバード・ビジネス・スクールAMP修了。また、中部経済産業局長として「グレーター・ナゴヤ」構想を提唱。日本貿易振興機構ニューヨーク・センター所長も務めた。経済産業省退職後、現在は教鞭をとる傍ら、自治体や企業のアドバイザーを務める。著書に『メガ・リージョンの攻防』がある。
(写真=iStock.com)
関連記事
韓国軍「日本には何をしてもいい」の理屈
なぜチコちゃんになら叱られたいと思うか
地方公務員に日大生がダントツで多い理由
韓国軍レーダー照射「反論ビデオ」の噴飯
IWC脱退"共存する可能性すらない"の異様