「デジタル・シルクロード構想」の猛威
さらに注目すべきは、2018年4月に北京で開催された、ある重要会議だ。「全国サイバーセキュリティ情報化政策会議」である。習近平主席以下、中国政府首脳が集まって「ネット大国化」への大方針が決定されたのだ。
情報化を中華民族に訪れた千載一遇のチャンスと位置付けて、「ネット強国」建設をめざすとされた。注目すべきポイントは4つある。
(1)共産党政権によるネットの統治を形成する
(2)サイバー企業を強大化する
(3)サイバー分野での「軍民融合」を進める
(4)「一帯一路」を活用した「デジタル・シルクロード」の建設で海外展開する
要するに、共産党による統治、軍事力の高度化、海外への展開がキーワードになっている。
プレーヤーは前出のBATという民間の巨大ネット企業でも、そこには色濃く「国家主導の統治システム」の一環であることを打ち出しているのだ。そしてその中国モデルのシステムを「一帯一路」の協力を通じて、その沿線国を取り込んで、広げようとしている。例えば、マレーシアには中国の警察用特殊カメラを、エチオピア、ケニアの治安機関には中国の顔認証システムが導入されている。
習近平が目指す「中国による国際的なネット秩序圏」
「デジタル・シルクロード」を建設することで、中国はデジタル政策を共有する経済圏の拡大を目指している。
2017年12月には80カ国、1500人が参加して、「世界インターネット大会」を開催している。ここで習近平主席はこれらの国々に対して「サイバー空間運命共同体」を作ろうと呼び掛けているのだ。まさに「運命共同体」という名の「中国による国際的なネット秩序圏」を目指している。その手段が、「一帯一路」を活用したデジタル分野での協力なのだ。
米国のシンクタンクであるカーネギー国際平和財団はこう警鐘を鳴らしている。
「デジタル・シルクロードは中国の通信企業にインフラ建設を認めるもので、ポータルサイトや電子商取引サイトなど、あらゆるデジタル媒体へのアクセス権を与えるもの。非常に長期間にわたって中国の足跡が残ることになり、そうなった時には他の選択肢は残っていない」
欧米諸国の見方はこうだ。中国は、「国家の政策でBATを成長させ、そして成長したBATを活用して国家の統治を進める」といった、国家とBATが一体となったデジタル覇権戦略を進めている。
そして中国は国家自らが国内のデータを囲い込んで国外には出させず、他国のデータは積極的に入手して、いわば一方通行の「デジタル保護主義」でデータ争奪戦を制しようとしている。しかもそれが国家による統治強化につながっている。
そうしたデジタルを巡る中国の経済システムそのものに強烈な警戒感を抱いているのだ。