高齢者もできる、宇宙飛行士流トレーニング
当たり前のようですが、寝たきりを予防するリハビリの大きな柱をなすものに運動と食事が挙げられます。今回はこの2つ、特に運動について触れたいと思います。
宇宙飛行士のリハビリには特殊な運動機器やプールなども使っていますが、今回はいつでも、どこでも、手軽にできるトレーニング法を4つご紹介します。体力に自信がない高齢の方であっても取り組みやすいように自身の体重と椅子のみを使う医学的研究に基づいたトレーニング法です。私が長年勤務していたクリニックでも患者さんに勧めてきました。宇宙飛行士のリハビリに取り入れることを検討中のものもあります。
今回取り上げるトレーニング法は、下半身と体幹の筋肉、とりわけ、人間が直立歩行したり姿勢を保ったりするための「抗重力筋」の筋力強化に役立ちます。また、比較的継続しやすい運動として考えれば、骨粗しょう症の予防にも効果的であると言えます。
「スクワット」は、主に太ももから腰部にかけての大きな筋肉を鍛えるトレーニング法です。写真のように椅子の背もたれに手を置いて行えば安全であると同時に、体の重心をコントロールしやすくなります。「カーフレイズ」は、ふくらはぎの筋力増強に効果的で、ひざ痛の人でも簡単に行えます。「ニートゥーチェスト」は座りながらできる腹筋のトレーニング法です。負担が軽いと思える方は、両足を揃えて動かすとより効果的ですが、片足ずつの運動でも十分です。
トレーニングは週2~3回程度で効果を出すことが可能
「プランク」は、背筋や腹筋を中心とした体幹の筋肉に対して効果的で、実際に宇宙飛行士もリハビリで取り組んでいます。ただ、強度を高めようとして、姿勢を保つ時間を長くすると、かえって負荷がかかりすぎる場合もあるので注意しましょう。30秒以内に留め、きついと感じた方は20秒程度でもいいでしょう。無理をしすぎないことも大事なトレーニングの考え方です。
最初の3つのトレーニング法では、自身の体重を利用して、1方向あたりの動作を4秒ほどかけてゆっくり行うことと、動作の切り替え時に1秒しっかりと止めることが大事なポイントです。特に「スクワット」では、ひざ関節を伸ばしきらないことが大変重要なポイントです。
このような一連のポイントを押さえることで、筋肉中の血流が制限され、成長ホルモンの分泌も高まり、筋肥大が促進されます。トレーニングは週2~3回程度で効果を出すことが可能です。できれば、休みの日を挟みながら行うのがいいでしょう。体が痛いときや体調が悪いときは、無理をせずに休みを取りましょう。