閣議決定の内容が丸1日間、意図的に伏せられていた
今回の脱退で、もう1つ気になることがある。政府は脱退方針を25日の閣議で決定していたのだ。にもかかわらず同日は公表せずに翌日の26日に発表した。つまり、政府の最高意思決定である閣議での決定内容を意図的に伏せていたのだ。
25日の閣議後、IWC離脱方針を決めたのではないかとの情報を得た記者が「日本はIWCの加盟の是非などを含め、検討を行っていると思いますけれども、現状の検討状況や何か決まったことがあれば」と質問したのに対し、菅氏は「政府の検討状況についてお答えすることは差し控えたいと思います」と答えを濁している。
同じころ吉川貴盛農相は同趣旨の質問に対し「政府としての検討状況は、まだ何も決まっておりません。お答えすることは差し控えたいと存じます」と答えている。「何も決まっておりません」は、ミスリードと言わざるを得ない。
菅氏は、閣議決定を1日間公表しなかったことについて「こういう事例は、これまでにある。脱退にかかる関係国との調整を含め、諸般の事情を総合的に判断した結果」と語った。しかし、閣議決定の内容を意図的に隠すようなことが頻繁に行われているとすれば、政府が意図的に情報操作していると言われても仕方ない。
安倍政権のナンバー1と2が「偶然にも」捕鯨推進派
日本がIWCを離脱することになった経緯を復習しておこう。何と言っても二階俊博自民党幹事長の存在が大きい。二階氏は、古式捕鯨発祥の地とされる和歌山県太地町が地元。捕鯨推進派議員のドンである。また太地町と並び、山口県下関市も「くじらの街」として知られる。こちらは安倍晋三首相の選挙区だ。
今の安倍政権で最高権力者とナンバー2が、「偶然にも」捕鯨推進派なのだ。二階氏がIWCからの脱退と商業捕鯨の再開を求め、首相官邸に働き掛けて実現したというのが簡単な構図だ。
一方、外務省は慎重論が根強かった。これまで国際社会で協調的な立場を演じることが多かった「伝統」を守ろうという面もあるが、何よりも脱退により日本外交に影響が及ぶのを恐れた。
今年は大阪で20カ国・地域(G20)首脳会合が、来年は東京五輪が、そして2025年には大阪で万博が開かれる。反捕鯨国が日本のIWC離脱に反発してボイコットする国が出るようなことがあれば日本外交にとっては大変な痛手となる。早くもG20にあわせてシー・シェパードなど反捕鯨団体が大規模な抗議行動を実施するのではないか、との観測も出ている。