「やらないこと」をジャッジするマネジメント
「漢方治療」のキーとなるのは、「マネジメント」と「組織開発」です。
まずはマネジメント。コンプライアンス遵守が叫ばれる昨今、マネジャーの課題はかつてないほど高難度になっています。大変な割に給与面でもうまみが少ないとしたら、いまや誰も管理職になりたがらないのは当たり前ですよね。
しかし整理してみると、いま現場のマネジャーに求められているのはただ一つ「残業を減らして、かつパフォーマンスを上げるマネジメント」で、これができるマネジャーの人材開発が必要となります。とりわけ、「やるべきこと」を見極めるために「やらないこと」をジャッジするという、マネジメント層にしかできない仕事をこなすため、自分の判断の軸をブレずに持つことが極めて重要です。
次は、「組織開発」。残業の感染や集中を起こさないためには、「業務」「コミュニケーション」「時間」、この3つの透明性が担保されている組織開発を目指さなければなりません。つまり、「誰が・何を・どんなふうに行うか」を明確化し、上司・部下のわけ隔てなく、従業員同士が相談しあえる風土を保ち、就業時間をはっきりと意識するようにする、ということです。
繰り返しになりますが、これらの「外科手術」と「漢方治療」の両輪を、人事部と現場だけではなく、経営陣が「会社が儲かるための施策」として断行していかなければいつまで経っても変わりません。
「労働者を呼んだのに、来たのは人間だった」
入管法改正にしろ、これだけ外国人労働者を呼び込もうとしてもうまく集まらない現状を見るにつけ、思い出す言葉があります。
「労働者を呼んだのに、来たのは人間だった」――20世紀のスイス人作家、マックス・フリッシュの言葉ですが、要するに、いくら国が労働者を求めたところで、来るのは人間であって、その人たちはここで恋に落ちて、子どもを生んで、何世代も生活していくわけです。
僕は教育学部出身ということもあり、どうしても教育のことが気にかかるのですが、そうなったときには、今の学校に支えるリソースはないし、だからといって放っておくと、不満を持った若者がたくさん出てくる……今のフランスのような状態になる。だからこの問題は、とくに教育と医療に関する議論を抜きにしてやるのは危険です。