長時間労働の果ての「過労死」「過労自殺」をどう防ぐか

――長時間労働が行き着く最悪のケースが、過労死や過労自殺です。NHKや電通といった大企業でも痛ましい事件が報じられました。特に長時間労働とハラスメントなどが合わさった、いわゆる“二重苦、三重苦”のケースはどう捉えればいいのでしょうか。

中原淳『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(光文社新書)

「過労死」は不名誉極まりない日本語であり、かつ英語にもなってしまった言葉なので、わたしたちは「死語」にしていく覚悟を持たなければなりません。ただちに、これは行うべきことです。また、メンタルリスクに関して言うと、“二重苦、三重苦”という言葉は示唆的で、深刻なケースに陥りやすいのは、長時間労働に加えて、上司のマネジメントが機能不全になっている、会社の労務管理がゆるいなど、すべてのセーフティーネットが破られたときだと思います。セーフティーネットが次から次へと破られていくと、最後に行き着くのは、致命的なリスクです。そういったケースは、金輪際ゼロにしてかないといけない。

そういう意味で、平成は昭和の悪い部分をアンインストールしきれませんでした。次の時代では新しい時代の職場環境を作っていく――3年後はまだ無理だと思うけど、10年後、20年後には、『残業学』がもう必要なくなり、読まれなくなるような社会に変えていきたいですね。

中原 淳(なかはら・じゅん)
立教大学経営学部 教授
1975年生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学准教授などを経て、2018年より現職。大阪大学博士(人間科学)。専門は人材開発・組織開発。立教大学経営学部では、BLP(ビジネスリーダーシッププログラム)主査、リーダーシップ研究所副所長をつとめる。著書に『職場学習論』『経営学習論』(いずれも東京大学出版会)などがある。研究の詳細は、「NAKAHARA-LAB.NET」。
(聞き手・構成=的場容子 撮影=プレジデントオンライン編集部)
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