80代妻が介護する80代後半の夫は「ショートステイを拒否」

老老介護に関してはケアマネージャー(73歳・女性・非常勤)から、このような事例が挙がりました。

「私が担当しているご家庭で、80代後半の旦那さんの介護を同じ80代の奥さんが1人で担っているケースがあります。ケアマネとして奥さんに『ショートステイなどを上手に使いましょう』とすすめても、旦那さんがそれを拒否する。私は旦那さんに『奥さんのほうが先に倒れちゃう。介護してくれる人への感謝の表し方はショートステイしかないですよ』と助言しました」

80、90代の高齢者を介護するには、世話をする側も高齢なので、体力に留意しなければ共倒れになります。また、できるだけ孤独にならない工夫が必要といえそうです。

老親を介護した(している)人々は「介護は10年も20年も続くものではないので、やらないで後悔するよりちゃんとやりたいと思っている」という意見が目立ちました。しかし、ひとりで抱えこまず、ケアマネージャーなどから情報を得たり、賢くサービスを活用したりして、精神的な孤立や肉体的な負担を減らすことを優先してほしいものです。

60、70代介護は「時間」「お金」「気遣い」がキーワード

一方、親の年齢が60、70代で、それを推定40、50代の子供が介護する場合はどうでしょうか。

40、50代というとまだ子育て期なので、子供の教育費や食費がかかる時期です。共働き世帯も目立ちます。かさむ出費で家計が苦しく、忙しい最中に、親が倒れるという事態が突然起きます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TAKATEN1059)

4年前から実母(70代)の介護がはじまった専業主婦Kさん(現在52歳)の事例を紹介します。現在、会社員の夫と社会人2年目の娘と暮らしており、徒歩10分のところに実家があります。4年前、実母が73歳のときに脳血管疾患になります。後遺症で舌の感覚が鈍くなり、認知症も発症し、家事をする意欲もなくなったそうです。介護度は「要介護2」。独身の妹はフルタイム勤務のため、ほぼノータッチ。実父は家事が全くできないので、Kさんが食事をつくって毎日届ける日々でした。洗濯物が乾かない冬に、おねしょを繰り返すので、寝る前に「トイレに行こう」とか「ぬれてもいいように下に引くものを変えよう」とか言うと、母もプライドがあるのか怒ったそうです。

子育てであれば、日々少しずつ成長し「明日はもっとできる」と希望を持てるけれど、介護は逆にできることが減っていきます。気づくと1日がたっており、友達との約束もできなくなりました。自分の時間が全く持てないので「介護とは自己犠牲」と言い切ります。また、教育資金とちがって何にどのくらいかかるかわからず、自分も病気になって家で親を看られなくなったときに介護保険との差額はどのくらいか、など資金面の心配が大きい、とKさんは語ります。