50代の若年性認知症の女性が施設を使えないワケ

ケアマネージャーが担当している50代の若年性認知症の女性の事例も挙げます。

「高校生・大学生の子ども2人と夫、義母と暮らす50代の若い女性の認知症患者です。本人も家族も現実を受け入れられない状態で、女性(嫁)と義母との関係も悪くなったと言います。介護保険サービス内で行ける施設は、主に80~90代を対象としたもの。この女性は、徘徊や困った行動、排泄の失敗もあるので『重度』なのですが、年齢が若いと入れる施設がないのです。デイサービスも週4回が上限。家族で面倒をみるのは難しい状況なので、現状、精神科病院の施設か遠くの有料老人ホームを探すという選択肢しか残されていません。ケアマネとして、家族との仲を調整し、社会資源を活用しながら女性の居場所を考えています。このままでは家族崩壊に至る場合もあるので、調整役として頭を悩ませています」

プロでさえ音を上げる、尋常ではない“若若介護”

今回のインタビューや取材で明らかになったのは、被介護者が50代の場合、歩くことができたり、頭がはっきりしていることも多いため、かえって不穏・攻撃的な態度をとったりする傾向が目立つということでした。「車いすになってホッとした」という意見がありました。要介護レベルが高まったことが介護する側の救いになったとは悲しいことではありますが、これが介護の現実なのです。

また50代の介護の場合、本人や家族の精神的な戸惑いやギャップが大きいため、環境に適応できず、介護による家族崩壊の危機もあり得ます。そして、被介護者が若いため、「この先、何十年も続くのか」「20年以上続く介護もあると聞いた」など、未来に希望が持てず、絶望感にさいなまれるのです。

先が見えない“若若介護”に関しては、筆者も残念ながら有効な解決策が見いだせていません。

(写真=iStock.com)
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